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【漫画】嘘喰い17 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

情報

作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 17

ざっくりあらすじ

Lファイルを手に入れた貘は、いよいよ行動を開始する。彼が目を付けたのはテレビ業界。超人気司会者・緒島に接触し、彼が隠している過去をチラつかせることで、殺人・薬物といった犯罪を暴露する番組を無理矢理に放送させる。

感想などなど

暴力の強ければ強いほど、高い地位につくことができる社会――こういう言い方をすると、野蛮な社会と思えるかもしれないが、嘘喰いで描かれる社会はそういう社会だ。暴力と一言で言っても、貘は持ち前の知能と、仲間の力を振るうことで地位を確立させていった。

貘は体力がないに等しい。腕力によった暴力は、他を頼るしかない。

そんな彼のいる廃ビルに、絶対的な腕力を持つカラカルがやって来た。Lファイルを手に入れたことを聞きつけ、Lファイルを奪うか、もしくは仲間に引き入れるか……どっちにせよ、どんな男かを知るためにやって来たようだ。

貘の方も、このカラカルがただ者ではないことは分かっている。アイデアルという賭郎と敵対する組織の人間だということも把握した上で、彼に頭脳戦を仕掛けることにした。といってもギャンブルのような騙し合いではなく、シンプルなパズルゲーム――ただし、絶対に解くことのできないパズルを押しつけたのだ。

このパズルを解くことができたら、会ってあげてもいいよ、と。とても挑発的な内容である。しかし、その解けないパズルを解いてしまった男が、絶対的な武の暴力を持つカラカルであった。

武だけでなく、知でも長けているとは……これから先、いつかは戦わなければいけない相手だろう。貘とアイデアルとの戦いが楽しみである。

 

さて、貘はいよいよLファイルを使っての行動を開始する。

Lファイルを改めて説明すると、ラビリンスを使って他人にアリバイを押しつけることで自身の罪を欺いた犯罪者達のリストのことである。つまり、もっと簡単に言い換えると、犯罪を犯した『権力者達』のリストである。

我々のような凡人には、これを使ってできることは脅しつけて金を巻き上げる程度のことしか思いつかない。もう少し考えると、それくらいの権力者ならこちらが逆に消されそうとか色々と考えてしまい、結局は何もできずに腐らせるだけのような気がする。

貘が始めた行動は、想像の斜め上を行くものであった。

まず貘が話を持ちかけたのは、空気を読まない毒舌で人気の大物司会者・緒島ケン太。彼の看板番組「報道KY宣言」にて、最近ある連続轢き逃げ事件のリーク映像が報道された。しかも容疑者の男を写したというのだから、視聴者も沸いたことだろう。

その映像を見て、轢き逃げという犯罪に対する怒りを露わにし、暴言に次ぐ暴言、毒舌に次ぐ毒舌を吐きまくる。放送コードギリギリというか、もう踏み越えているレベルだとして、上層部から怒られたことは言うまでもない。ただ視聴率20%越えという化物番組の司会者だからこそ、辞めさせられることはないのだろう。

そんな彼が、轢き逃げ犯でありLファイルに名を連ねていると、誰が予想しただろうか。

そのことをネタにしつつ、番組の乗っ取りすることに成功した貘。

そう、貘はLファイルを使って番組を乗っ取ったのだ。

 

乗っ取ったと言っても、番組の名前などは変わらない。内容もこれまで通り、暴露系の報道である。しかし、ただの暴露ではない。

本日の放送に呼ばれた6人のゲスト。その各界の著名人達が、実際にあった事件に対して切り込んだコメントをしていくという形式だった。しかし実は、その6人ともが凶悪な犯罪者であり、『とあるゲーム』を通して一人ずつ犯罪を暴露し、その証拠を突きつけていくという内容だったのだ。

その『とあるゲーム』とは通称マキャベリストゲームと呼ばれている(作中で名前が出てこなかったので、ファン達の呼んでいる通称である)。

ルールは少しばかり複雑である。

6枚のパネルに、それぞれ6人のゲストが割り当てられる。本ゲームでは1ターンごとに、「どのパネルをオープンするか」を指定し、合計で二回指定されたパネルがオープン、つまりはゲームオーバーとなる。いかに自分のパネルが指定されないかを競うゲームとなる。

指定する際には「何個目のパネル」というように行う。

例えばABCDEFというように並んでいて、一番最初はBからスタートしているとした場合。一番最初に指定する権利を得た人が、「二個目のパネル」といと、Dのパネルが指定されたことになる。そして次からはDのパネルから〇個目のパネル……というように続いていく。

指定者と数の決定には、各自に10枚ずつ配布されたマキャベリカードを使う。

ターンが始まると、6人それぞれが好きな枚数だけ使用する。そして6人の内で最も多く枚数を使用した一位の人が、パネルを指定する権利を得る。使ったカードは消費されるので注意だ。

そして指定する数については、二位の人が使った枚数と、一位の人が使った枚数だけ移動させることが可能である。

例えば10枚のカードを使用して一位になった場合、二位の人が使用した枚数が1枚だった場合は「9個目のパネル」を。二位の人が9枚使用した場合は、「1個目のパネル」を指定できるという訳だ。

それぞれの人が使った枚数は、ターン終了後に公開されるため、それを元にしつつ「何枚カードを使用すれば一位になれるか」を考える。また一位になれずとも、二位との枚数で移動する数は決定されるため、一位とのニアピンを狙えば一個目しか選択できないようになったりも狙えたりする。

さて、長々とルール説明に字数を割いてしまった。漫画は絵を使って説明してくれるので、もう少し分かりやすい。このゲームには貘は参加せず、6人のゲストが大金を払って枚数を指定する汚さ、オープンされていくパネルと非道な犯罪の数々を、テレビの視聴者と同じように読者も楽しむことになる。

このゲームを複雑にしているのは、ルール説明に不備があることだと思う。上記に示したルールは、自分の言葉で噛み砕いた内容となっているため、漫画とはニュアンスが異なる場所があるので何とも言えないが、ルールを読んでいて気になるポイントが出てくるはずである。

例えば。

カードを使用するというように、ここでは書いている。しかし、この使用するとは一体どういうことなのだろうか。漫画に記載されたルールには、このことは書かれていない。ゲストの6人が、『勝手に』自分が座っているテーブルの下に穴があることを発見。その穴にカードを落とすことで使用したことになると判断している。

カードの譲渡は可能なのか。1人に10枚ずつとあるが、他人のカードを自分で使うことができれば、他人を欺くことも可能かもしれない。まぁ、他人に自分のカードを渡すようなメリットはないと思うが。

 

貘の目的は何なのか。このゲームの行く末はどうなるのか。

すっかり貘の相棒のようになっている梶も大活躍する第十七巻。マキャベリゲームは人の汚さを全国に放送しつつ、まだまだ続きそうだ。

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