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【漫画】寄宿学校のジュリエット10 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

禁断の恋

情報

作者:金田陽介

試し読み:寄宿学校のジュリエット (10)

ざっくりあらすじ

長期休みが明けてダリア学園には、監督生選抜選挙ムードが加速していた。監督生を目指す露壬雄とペルシアの前には超えるべき壁がたくさんある。そんな中、病気から復帰した玲音に白猫を学園から追い出すために協力しないか、と話を持ち掛けられる。

感想などなど

黒犬(=東和国)と白猫(=ウェスト公国)、二つの陣営により構成されたダリア学園には戦争の火種が渦巻いている。学生という血気盛んなお年頃に加え、学生のみならず教師ですら、その火種を煽っているような感じもある。

監督生というのは一言でいうなれば寮のトップであり、学生達を監督し、統率し、指揮する立場にある。東和国とウェスト公国の対立が激化の一途を辿り、もはや疑似的な戦争のような感じすらある学園の雰囲気のせいで、寮のトップどころか国の代表のような趣すらある。

そんな監督生を決める選抜選挙ともなると、その重要性と真剣さは我々が通っていた学校の生徒会長を決める場合とは比肩にならないことが想定される。監督生に要求されるスペックの高さは、露壬雄の兄・藍瑠を見ていただければいい。完璧すぎて面白くない。

しかし国を変え、ペルシアと一緒にいることができるような世界にしてやると意気込んで兄すらもぶっ飛ばした露壬雄は、そんな学生達の期待に応えて、監督生になる程度の壁は越えなければいけない。

ここでくじけているようでは、彼の夢見る世界は夢のまた夢に終わる。

そんな気概とペルシアに対する惚気を全身にまとった露壬雄の前に、新キャラが現れる。彼女の名前は狗神玲音。高等部に上がる前に怪我をして、それ以来ずっと病欠していたとのこと。

それにしても可愛い。この学校に通う女性はみんな美しく可愛くなるのか。俺も通いたい。

 

監督生でありながらドジっ子属性が強めな胡蝶は、色々あって露壬雄を雑務係(=助手、秘書のようなもの)にしている。絶対という訳ではないが、この監督生の雑務係に選ばれた者が、選挙によって繰り上がりで監督生になることが多いらしい(雑務係でなくとも教師からの推薦があれば監督生には立候補できる)。このまま順当に勉学や運動、日ごろの生活態度を良くしていれば監督生になれることだろう。

そして藍瑠の雑務係は、先ほども書いた通り狗神玲音が選ばれたようだ。

つまりは彼女も監督生を目指している。一つの寮で三人の監督生が選ばれるため、他に対抗が複数人出ることを考えると、露壬雄と玲音はいずれ監督生の座を争うことになりそうだ。

さて、監督生というのは楽な仕事ではない。露壬雄みたいな学生を相手にしなければいけないことを考えると、胃痛と寝不足に悩まされることが想定される。とにかくそれほどに重大な責務だ。

そんな責務に就くには、それなりの覚悟と理由が必要になる。藍瑠は家を引っ張っていく家長としての覚悟の強さが、彼を監督生たらしめていることは、長期休みのごたごたで痛い程に分かった。

露壬雄の覚悟は説明するまでもないだろう。第一巻で「世界を変える」と豪語し、ペルシアと一緒にいられる世界を作るために奮闘している。愛の力は本当に世界を変えてくれるのではと、読者の期待も熱いことだろう。

それでは狗神玲音の覚悟は何か。彼女を監督生とする理由は何か。

その理由の一端が彼女の口から語られる。「白猫をダリア学園から追い出したい」と。つまりはそのために、彼女は監督生を目指しているのだ。それは露壬雄の目指す世界とは大きくかけ離れた思想であり、いくら友人とはいえ、争わなくてはいけないということがここで確定してしまった。

二人の覚悟のぶつかり合いは、またいずれ。

 

そんな監督生を目指しての戦いは黒猫寮だけで起きていない。白猫寮でも同様に、監督生になりたいがために、現監督生の雑務係の席を争っていた。その渦中にいるのが、ペルシアの金魚のフンだとか散々言われているスコットであった。

変態とかドMだとか散々な言いようを、これまでもこれからもすると思うが、彼がペルシアに対して抱く想いは本当のようだ。筋肉馬鹿ソマリとの間で勃発したボクシング勝負(だと思う)では、ソマリに一方的に殴られながらもソマリの体力が切れるまで耐え続けるという意味不明な勝ち方をして、監督生の雑務係となった。

こうして主要人物は揃っていき、監督生選抜選挙が開催される。

こうして感想記事を書いていると忘れそうになるが、この作品はラブコメディだ。シリアル色が最近になって濃くなっているが、コメディ要素も忘れてはいけない。そもそもソマリ対スコットの対決も、シリアスなはずなのにギャグにしか見えない絵面の連続である。

そして監督生選抜選挙も佳境になっていく中、シャル姫がバイトしたり、バレンタインという男にとっては天国か地獄か当日になるまで分からない日もやって来る。チョコ欲しさに土下座する露壬雄……気持ちは良くわかるよ。俺も欲しい。

ちなみにこの記事を書いている時、もう少しでバレンタインだ。悲しくなってきたので記事はここで止めておこう。

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