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【漫画】寄宿学校のジュリエット12 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

禁断の恋

情報

作者:金田陽介

試し読み:寄宿学校のジュリエット (12)

ざっくりあらすじ

川で溺れて記憶を失った露壬雄。彼の記憶を取り戻すべく、蓮季とペルシアは、一時協力体制を取ることにするが……。

感想などなど

第十一巻は記憶喪失の露壬雄が、蓮季を彼女と勘違いしてしまったところで終わっている(まんざらでもない蓮季が可愛い)。記憶をなくすことでピュアな部分だけが残った露壬雄は、あの丸流ですら照れさせるくらいの破壊力を持っている。

何というか……感情表現がこれまで以上にストレートなのだ。蓮季のことを彼女と信じて疑わない彼は、彼女であることをまんざらでもない顔をしつつ照れつつ否定し、それは記憶を失ってしまったことに怒っていると考え、蓮季を御姫様抱っこしてデートに赴こうとする。

デートといえば御姫様抱っこという図式が浮かばないのは自分だけだろうか。行き過ぎたピュアな者達のデートは、御姫様抱っこという結論に至るのかもしれない。

という感じで、しばしの幸せを享受した蓮季だったが、このままでは良くないとジュリエットに協力を持ちかけた。彼が記憶を失ってしまったことを知ったジュリエットは、彼との思い出の地を辿っていくことで記憶を呼び戻させることに。

そうすると懐かしいシーン場所が出てくる出てくる……懐かしい。ロザリオをプレゼントされたボート、手作りクッキーをプレゼントした厩舎、そして二人が恋人になった噴水……思わずこれまでの巻を読み返してしまった。

こういう過去を振り替えさせるエピソードが来ると、最後が近いように感じられてしまう。それをより痛感させるように、監督生選抜選挙はいよいよ、それぞれの候補が公約を発表が始まろうとしていた。

 

公約発表。

生徒が投票を決めるに辺り、最も重要なファクターとなると思われる。この発表の舞台で、変な発表をしてしまえばこれまでの努力も水泡へと帰することになるだろう。候補である露壬雄、蓮季、玲音、ペルシア、スコット、アビの六人が行う。

それぞれの性格と覚悟が、その公約発表には色濃く出ている。

ペルシアはこれまで自分の背中を押してくれた人達への感謝と、次は自分がみんなの背中を押して困難を乗り越えてきたいという純粋な願い。スコットはペルシア様ファーストを掲げ、アビは平民の労働階級の出身者でも、上に立つことができるという背中を見せつけたい一心で戦っている。

蓮季は露壬雄の背中を追ってきて、自分が挑戦することで皆を幸せにしていきたいと語り、玲音は白と黒の分断を掲げた。さて、ジュリエットと一緒にいることができる世界に変えたい露壬雄は、一体どのような発表をしてくれるのか。男らしく、彼らしい言葉で語られる公約は、是非とも読んで確認して欲しい。

 

公約発表が終わったとて、すぐさま結果が出るという訳ではない。全員が素晴らしい発表をし、それぞれがそれなりの支持層を獲得した。これからどのような結果になるかは予想することは難しい。

そんな緊張の中、描かれていくのは白と黒の分断を公約として掲げた玲音の過去だ。これまで白に対する憎しみの強さは、嫌というほどに伝わってきた。しかしそれも納得できるだけの重い過去が、彼女にはあった。

ネタバレになるのでその詳細は読んで欲しいところだ。ただ一つ言えることは、彼女が肉しむ白の姿は『東和を憎しみ』ながら、『自身の保身のためならば娘の人権を踏みにじる』ことも厭わない――そんな好きになることが難しい姿を間近で見てきたのだ。

だからこそ、彼女は白と戦うことを決めた。これ以上、私のような被害者を生み出さないために。

この巻で玲音のことが好きになった読者も多いのではないだろうか。かくいうブログ主も、そんな読者の一人である。

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