工大生のメモ帳

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【漫画】少女終末旅行④ 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻

※ネタバレをしないように書いています。

絶望と仲良く

情報

作者:つくみず

試し読み:少女終末旅行 4巻

ざっくりあらすじ

文明が崩壊してしまった世界で、ふたりぼっちになってしまったチトとユーリ。愛車ケッテンクラートに乗って、廃墟を当てなく彷徨う彼女達の日常。

感想などなど

「電車」

ブログ主はしがない社畜なので、毎日のように電車にお世話になっている。有り難いことに時間をずらしての出社なので、人は周囲に少なかったりするのだが、それでも電車に揺られての通勤は疲労が溜まるものだ。

そんな我々のような一般的社会人が想定する電車は、終末世界にはない。

電車はケッテンクラートのような乗り物が乗るほどに大きい。戦争が激化していたと思われるので、きっと戦車や機械が乗ることを想定しているのだろう。人が乗る利便性は全く考えられていない。

そんなことを彼女達は考えていない。

「回ってる地球の上で急いでもしょうがないじゃん」というユーリの台詞に、「せやな」と一人納得するブログ主。代わりにチトが「いや それは違う」と否定してくれた。

電車は時間に正確に動いていた。彼女達にとっての時間は、我々が想像するものとは違う尺度なのだろう。「私たちだって”食料”っていう時間の制約があるんだからな」というチトの台詞が印象深い。

 

「波長」

墓で奪ったラジオから、悲しい音楽が聞こえてくる。ラジオから流れるからには、どこかで誰かが電波を飛ばしているのだろうか?

しかし、崩壊しきった終末世界で、音楽を流すような物好きがいるとは考えにくい。音楽を奏でても腹が膨れる訳でもなく、誰かが救援に来るわけでもない。そんな無駄なことに費やす労力はどこから出てくるのか。

……と思ったが。これまで出会った人達は、何かを形に残すことで生きる意味を見出そうとしていた。日記を残す者、地図を作る者、飛行機を作る者……そのどれも、生命活動の維持に必要なものではないだろう。現代社会に生きる我々は、日記を書かずとも生きていけるし、地図だって書く必要に迫られない。

しかし、彼・彼女らにはそういった行動をしなければ生きていけないのだろうと思う。

音楽だって、聞かなくても心臓は鼓動する。だが、音楽がないと生きていけない者達がいるのだろうと思う。たとえ自分には理解できない価値観だとしても、それぞれが培った価値観が、生きる意思を突き動かしている。

と長々と語ったが、この音楽を奏でているのは人類ではないことを知るのは、第四巻の最後の方である。

 

「捕獲」

最後に見た生物は、水槽に一匹だけ残された魚でした。

楽しそうな二人を見ていると、この世界が終末であるということを忘れそうになるが、人どころか生物がいなくなりつつある廃れた世界であることを、ふと思い出される。

そんな世界で出会った、新たな生物は、電波を介して言葉を話す珍妙な姿の生物であった。色は真っ白く、姿形は細長く、触れた感想は柔らかい。どこかゆるキャラを彷彿とさせるユルーい容姿で、チトとユーリの後ろをついて回る。

これまで荷物が減っていくばかりの旅路であったが、ヌコと名付けられたその生物が仲間に加わった。こいつが良いキャラしてるんだわ。

 

「文化」

ヌコの餌は弾薬であるということが分かった。ユーリに言葉を教えてもらい、「ウマイノデモットクイタイ」「クエナイモノニ…カチハネェ…」と言いつつ銃弾を飲み込んでいく様は、この生物に対する疑念を募らせていく。

なにせ人の話す言語を理解し、覚えていくことができる程度の知能があるのだ。少なくとも猿よりも上である。しかも銃弾を喰らうという生態。

良く分からないものに対しては、恐怖心を抱くものだが、彼女達からしてみれば、度で出会うもの全てが分からないものばかり。ヌコを受け入れる心の広さはかなりのものだ。

まぁ、ヌコにも役に立つことがあった。どうやら電波が飛んでくる方向が分かるらしいのだ。それによりラジオから流れてくる悲しい音楽は、どこから来ているのかが判明する。

チトとユーリは、その音楽の正体を知るために、良く分からない生物ヌコを連れて旅を続けていく。

 

「破壊」

かつて猛威をふるっていたと思われる兵器を、うっかり動かしてしまったチトとユーリ。当たりは火の海と化し、それを見つつ眠りにつく二人。こんな惨状が、過去には広がっていたのだろうと想像してしまうのは、自分だけなのだろうか。

「ニンゲンハコワイ」とヌコ。同感だよ、謎生物。

 

「過去」「接続」

ヌコに指示されるがまま向かった先には、地上に打ち上げられた潜水艦があった。中に入ると、かつての設備が残されていた。そこではカメラを機器に接続して、中身を見ることができた。

カメラに残されていた写真が一面に映し出される。

何故だろう。ただそれだけのシーンなのに、涙が出そうになった。このカメラの持ち主だったカナザワが、女性と一緒に写っている。彼女はカメラに笑顔を向けていた。チトやユーリと同い年くらいの子供が、カメラに向かって何かを話しかけている。赤ん坊を抱えた女性が、嬉しそうにしている。

崩壊した世界の過去には、温もりに満ちた世界が広がっていた。

「私たちずっと二人っきりだけどさ」「こうして人々が暮らしてたんだなってことがわかると」「少しだけ寂しくない気がする」

 

「仲間」

潜水艦にいて、悲しい歌を奏でていたのは、ヌコの仲間達だった。

二人しかいないチトとユーリとは違い、ヌコにはたくさんの仲間がいたのだ。ヌコは仲間達の元へと帰り、そしてどこかへ去って行った。

これから先、世界は終わっていくしかないのだけれど、二人はどんな旅をしていくのだろう。ヌコも去って二人きりに戻った旅は、まだまだ続いていく。

心にずっと沈んでくる感動が心地良い、そんな作品であった。

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