工大生のメモ帳

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涼宮ハルヒの分裂 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

語り継がれる伝説

情報

作者:谷川流

イラスト:いとうのいぢ

試し読み:涼宮ハルヒの分裂

ざっくりあらすじ

いつも通りのSOS団の日常だったはずが、中学時代の同級生・佐々木の登場と共に瓦解していく。佐々木の元にも未来人、宇宙人、超能力者が現れたというではないか。それではまるでSOS団が二つできたみたいな――。

感想などなど

ついに一年が終わり、ハルヒ達は進級した。懐かしきかな一巻の頃、ハルヒが暴走して世界を作り替える一歩手前まで迫ったことが思い返される。それからは色々な事件に巻き込まれ通しであり、ナイフで刺されて死にかけたこともあった気がする。

ハルヒはこれから残りの学園生活も、未来人と宇宙人と超能力者と共に楽しく遊んで過ごすのだろうか。平穏無事な生活を願うキョンの願いは、きっと叶えられることはないのだろうと夢想する。

さて、進級したということは後輩ができるということも同時に意味する。ちなみにSOS団は正式な部活ではないので、入部届を顧問に提出するとかいう煩わしい手間は必要ない。ハルヒが認める、もしくはハルヒに拉致されるという事件・事故に巻き込まれることで入ることを許される希有な団であり、そこに入りたい者がいるかと問われればいないのではないかとキョンは思っていた。ちなみにブログ主も思っていた。

しかしながらそんな予想に反し、SOS団に入りたいと文芸部室の扉をノックする新入生の多さには、キョンと一緒に驚いた読者も多いことだろう。恐い物みたさなのか? はたまた朝比奈さんの可愛さに惹かれたのか? おそらくその両方かと思われる。期待に目を輝かせる新入生相手に、ハルヒの放った一言は入団試験の始まりを告げていた。

長々と書いたが、ここまでが冒頭部分である。本題はハルヒが入団試験をウンウンと考えている平日が終わり、休日にていつも通りに開催される不思議探索からであろう。

新キャラ、佐々木の登場である。

 

佐々木はキョンの中学時代の同級生であり、小泉一樹が「魅力的」と評した女性だ。キョンは彼女とは友人関係に他ならないと語り、恋愛感情を精神病と断じる佐々木の言動も鑑みるに、二人の関係は非常にさっぱりとしたものなのだろうと想像できる。

しかしながら、SOS団がリサイクル市に向かうための駅での集まりに偶然にも遭遇した佐々木と、キョンが仲睦まじく話す光景を見て、ハルヒの心が少しばかり不安定になったことは、小泉一樹の不機嫌な顔を見ていれば何となく分かる。

ハルヒがキョンと佐々木の関係性を疑っているのか? いや、二人の関係性に嫉妬を抱いているのか? その真相はハルヒに聞いてみなければ分からないが、素直に彼女が答えてくれるとは思えない。一発くらい殴られる覚悟はしておかないといけないだろう。

そんな佐々木を中心にして、物語は展開されていくことになる。

佐々木に休日に呼び出され向かってみると、彼女の周りには朝比奈さん誘拐に関わっていた未来人・藤原、小泉とは別口の組織に属す超能力者・橘京子、長門が天蓋領域と呼称する宇宙人・周防九曜。

佐々木の周りにも、宇宙人に未来人に超能力者が揃っていたのだ。

そして語り出すは、佐々木が神ではないか――いや、彼女を神にすべきではないかという奇想天外な内容であった。信じられるはずがない、常識では捕らえきれない話であるが、キョンはハルヒという奇天烈な存在と長らく一緒にいた変わり者だ。そして佐々木もまた変人であろう。その話を聞いて、キョンの反応と繋げることで真実だと確信したようだ。

自分は神と呼ばれるような力を持っている。

そう認識しているにも関わらず、佐々木は何も変わらない。ハルヒのような事件を起こさず、ただ流されるように理性的に振る舞っている。この異常性は何と言い表すべきだろうか。

そして佐々木陣営の宇宙人、超能力者、未来人の間でせめぎ合いが起こっていく。

 

この第九巻は上、中、下の内の上のような内容だ。引き込まれるような導入と、タイトルにあるように物語が分裂し、読者の想像を駆り立てるような期待感を抱かせる。ここまで読んだ方は、そのまま次巻「涼宮ハルヒの驚愕(前)」「涼宮ハルヒの驚愕(後)」まで買ってしまうことだろう。

というか買うことをお勧めする。このまま消化不良で終わるのは、精神衛生上よろしくない。

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