※ネタバレをしないように書いています。
魔王(演技)
情報
作者:むらさきゆきや
イラスト:鶴崎貴大
試し読み:異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術 (7)
ざっくりあらすじ
レムの中に残る魔王の魂を消す魔術が、ダークエルフに伝わっているのだという。そのことを知ったレムは、個人的な問題だからと一人で向かおうとするが、ディアブロはついていくことに……。
感想などなど
教会を盛大にぶっ壊して、ルキマーナに倒して貰うことで万事解決を狙ったディアブロが、いつの間にか神様扱いされてしまった。そういえばルキマーナはディアブロを魔王だと信じていたな……と思いつつ、魔王と名乗るディアブロを崇め奉り始める信者達。
シュールである。
枢教院は逃げた先の水路にて、《聖騎士》に殺されて死んだ。その聖騎士は金さえ貰えればルキマーナですら殺そうとする、あのゲイバルトだった。このキャラ、ルキマーナを殺そうとしたポッと出で終わらず、ここまで本筋に関わってくると予想できた者はいただろうか。
そうして、とにもかくにも一段落ついた。そんな中、シエラの父が死んだという報せが舞い込んだのだ。それだけでもてんてこ舞いではあるのだが、さらにそこに『レムの中にはまだ魔王の魂が残っている』というのだ。
ディアブロの魔力を注ぐことで、魔王が復活したかに思えた。しかし実際は幼女の姿だったのは、それが魔王の魂の欠片に過ぎなかったからに過ぎない。まだ魔王の魂はレムの中に残っているのだという。
シェラの父の訃報と、レムの中に残っている魔王の魂の問題。それら二つを解消すべく、向かうは一先ずグリーンウッド王国。その近くにあると言い伝えられているダークエルフの住み処に、レムの抱えている魂の問題を解消する儀式魔術が言い伝えられているのだという。
儀式魔術……察しの言い方もいるかもしれないが、この魔術がエッ(略)。
そもそもダークエルフはどこに住んでいるのか?
ダークエルフの国はブラックウッドといい、グリーンウッドの隣にある。しかし、そこに近づこうとする物好きはいないらしい。なにせダークエルフは人族を食べると言われており、エルフの子供は ”悪いことをするとダークエルフに攫われるぞ” といって教育を受けるのだという。
つまり、ダークエルフとエルフは壊滅的に仲が悪い。
エルフ相手だけならば露知らず、歴史的に他の種族との仲もあまり良くないのだという。そこにシエラがのこのこ行って、無事に儀式魔術を教えて貰うことができるのだろうか。
答えは否。彼らは問答無用で、よそ者であるレムたちに攻撃をしかけてきた。
……まぁ、エルフのシエラも着いてきてるし、ディアブロは魔王と名乗るし、攻撃される謂われが無いわけでもないというのが手痛いところ。そんな状況も力業でねじ伏せる姿はマジ魔王である。演技とはいえ。
そろそろ魔王としての演技も板に付いてきたような気がする。
これまで魔王とか、神とか、この第七巻の冒頭では《聖騎士の証》という、教会で見せればあらゆる援助を貰えるチートアイテムを貰っている。神であり、魔王であり、聖騎士という矛盾した肩書きを持つディアブロは、今回になってさらに肩書きが増えることになる。
ただでさえ問題が多いというのに、さらにシエラに婚約の話が持ち上がる。それもそのはず、シエラの父が死んだことにより、グリーンウッド王国の王がいなくなったのだ。どこからか王となる者を連れてくる他ない。
つまり、誰かとシエラを結婚させ、その夫を王とするのだ。
その相手として選ばれた男が、これまた悪そうな男であって。もうこれだけ悪役顔をさらしていれば、逆説的に悪役ではないくて良い人説まで出てくる。
物語を読み進めれば読み進める程に問題が噴出し、その対応に追われる魔王様。演技の化けの皮が剥がれぬように……いや、シエラとかレムには素の姿を見せてもいいのでは? とディアブロを見ていると思わなくもない。
なにせディアブロが彼女達のためにしてきた行動の数々、もっともっとディアブロが報われる世界であって欲しいものだ。