工大生のメモ帳

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神達に拾われた男10 感想

【前:第九巻】【第一巻】【次:第十一巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

スライム研究に明け暮れて

情報

作者:Roy

イラスト:りりんら

試し読み:神達に拾われた男 10

ざっくりあらすじ

遠征を終えてギムルに帰還した竜馬は、治安が悪化し実害が発生し始めていたことに危機感を覚える。それらを解決するためにと開催された経営者達が集う会議に、竜馬も参加するが、話を誘導しようとする司会者に疑いを持ち始める。

感想などなど

住む街を決める上で治安は大事である。

ジョーカーが悪逆の限りを尽くし、バットマンが犯罪者をボコボコにする街・ゴッサムシティに、あなたは住みたいと思うだろうか。ここまで露骨に治安の悪い街は、現代の日本ではそうそうお目にかかれない。

ただ竜馬の住むギムルの街は、そうなってもおかしくない状況となっていた。

そもそもギムルの街はスラムが隣接している。そこに住むのは毎日のゴミ拾いで生計を立て、平屋の廃墟という劣悪な環境で過ごすことを余儀なくされた者達の集まりである。かつては冒険者を志してギムルにやって来たのかもしれないが、事情があって爪弾きにされたのだろう。

最近になって、街に訪れる者達も増えた。それによってスラムの住民の数も増えていく。となると治安が悪化していくという事態は避けられないように思われる。

街の道ばたで眠っている者達を見かけることが増えた。竜馬がお世話になっているモーガン商会も強盗・窃盗といった実害が出始めた。これから先、被害が増えていくことは容易に予想ができる。

街には警備隊という組織がおり、犯罪の取り締まりや捜査、巡回などを行っている。それでも抑えきれない犯罪の数々に加え、警備隊が逆にやり返されるという事態も発生しており、警備隊だけに任せていてはいけないという状況にまで追い込まれている。

そこで街の商人達が集まって会議を開くこととなった。店を持っている者にとって犯罪から身を守る術を持つ必要性は重々把握しているはず。そのための策を話し合うのだろう。

ただ会議とは、上手く回らないのが常である。

 

犯罪者にとって住みよい街とは治安の悪い街である。

店のセキュリティは甘ければ甘いほど良い。街を守る警備隊の士気は低ければ低いほど付け入る隙がある。街が汚く、光の届かないような裏道があればあるほど溶け込みやすい。正しくスラムのような場所があれば、大がかりな犯罪を進めるにはもってこいの立地である。

ギムルは正しくそうなっていた。

そんなギムルをよりよい治安の悪さにするために、会議には犯罪者側の人間が紛れ込んでいた(神や読者視点からは明らかである)。竜馬は遠征から戻ってきたばかり、会議に出ている商人達の顔もあまり把握していない。

しかしながら会議の流れがどうにもきな臭い方向に向かっていることを感じ取った。このままではギムルの街の治安は、さらに悪化するばかり。犯罪者にとって都合の良い方に。

それを上手い形で止めたのが、十歳くらいの竜馬である。日本の神に与えられた犯罪者としての才能が生きたのかもしれない。もしくは前世での経験だろうか。話の流れを誘導しようとしていた司会者の人間に、強気で当たり、会議の空気を支配した。

そこで竜馬が出した治安改善の案が、警備会社の設立である。

 

この第十巻では街の治安改善のために、竜馬が奮闘する内容となっている。

まず第一に警備会社の設立。そのために侯爵家の力を使い、上手い具合に話をまとめていく。さすがはできる社会人。人脈の使い方や、交渉の進め方が上手い。トントン拍子で話しが進み、ほぼこの第十巻で警備会社設立完了である。

第二にスラムにゴミ処理施設を作り、雇用を生み出すというもの。スラムの一角を潰して施設を建てるとなると、それなりに反対意見も出そうなものだが、これらも良い感じに潰している。ついでにスラムの区画整理を行い、誰も手を入れてこなかったスラムの闇に切り込んでいく。

基本的にこの作品の人間は龍馬に協力的だ。竜馬の考えは、この世界の住民にとってかなり時代を先取りした内容だとは思うのだが、それらについて行くだけの知能が、全員に備わっている。全員が前向きに、竜馬という人間を受け入れてくれているというのが、この作品をストレスフリーにしている大きな要因だと思う。

ただそれだけではつまらない。敵も出てくる。

この十巻ではかなり静かにしていた。最後に敵側視点の物語が差し込まれるのだが、「あんたらなんかしてたんか?」と首をかしげつつ、「いよいよ動き出してくれるのか?」と期待してしまう自分は悪神かもしれない。

ともかく徐々に治安が改善されていく過程は、シミュレーションゲームで自分の期待通りの結果が出たときに似た快感がある。やはり本作はゲーム化すべきではないかという意見は永遠と語り続けようと思う。

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