工大生のメモ帳

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神達に拾われた男9 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

スライム研究に明け暮れて

情報

作者:Roy

イラスト:りりんら

試し読み:神達に拾われた男 9

ざっくりあらすじ

ラトイン湖のあるファットマ領の領主であるポルコ・ファットマ伯爵に、「領の名物を作って欲しい」「祖父から受け継いだ温泉を掃除してほしい」という二つの依頼を受けたリョウマ。早速、持てる力と知識の全てを駆使して解決に取り組んでいく。

感想などなど

正直、読むのは止めようと思っていた。だが妙な魅力に取り憑かれ、九巻にまで辿り付いてた。不思議である。どこが面白いのか聞かれても、困ってしまうというのに。そんな程度のプレゼン力で、感想ブログなんてするなと言われてしまいそうだ。

だが、この第九巻はリョウマという人間の核心を突いた内容であり、色々な意味で不穏な空気というものを漂わせるものとなっていた。

第八巻、神セーレリブタとリョウマが会話したシーンというものを思い出して欲しい。神の精神攻撃を「ブラック企業で鍛えられたので」という無茶苦茶な理屈で無効化してしまったリョウマ……ということで納得していたが、実際のところは違うようだ。なんと前世で過ごした地球の神が、一枚噛んでいるようなのである。転生したというのに地球での因縁を避けることができないとは、死んでも報われないとはこのことだろうか。

また、神や公爵家、ファットマ領主のポルコ、店の経営の手伝いをしているカルムなど、多くの人達がリョウマについて語るシーンというものが、この第九巻には多い。どの面々も、リョウマについて悪く言う者はいない。皆リョウマに助けられたり、仕事を貰ったりしている。これまでの行動を鑑みても、彼が誰かに対して悪さをしたということはない。

山賊など悪いことをした者に対して、情け容赦なくぶちのめしたこともなくはないが、それを悪いことと責める者はいないだろう。彼の見返りを求めない優しさ……それは大変美徳であろう。

しかし、そのあまりに優しすぎる行動の数々に、疑問や裏を感じる者もいるのだ。

 

さて、そんなリョウマに領主からの依頼が舞い込んだ。この第九巻はその依頼に対する取り組みでほぼ終わる。読む側としては、本筋がしっかりある方が理解が捗るのでありがたい。

依頼一つ目「祖父から受け継いだ温泉を綺麗にしてほしい」

このファットマ領には、日本からの転生者がいたのだろうか? 相撲といったような文化が残っているようだ。温泉もそんな文化の一つだろう。

源泉掛け流しの浴槽には、炭酸カルシウムだかの結晶がこびりつき、分厚い層をなしていた。つまりは元の美しかったであろう姿は、見る影もない上に、ブラシで擦った程度では取れそうにない頑固な汚れであった。

しかし、リョウマにはスライムがいる。アシッドスライムの出す酸と、スティッキースライムの出す粘着液を、適切な配分で混ぜ合わせることで汚れを落とす液が完成となった。これはまた商売の香りがしてくる。

掃除ということでクリーナースライムもスカベンジャースライムも活躍する。さらに新たなスライムであるワイヤースライムも、周辺の竹林を綺麗に整える際のチェーンソー的な役割で活躍してくれる。あっという間に綺麗になっていく過程は、読んでいて快感である。

依頼二つ目「領の名物を作って欲しい」

これは中々に厄介である。しかし、リョウマにはかつて麦茶で一つの村を救ったことがある。それにより麦茶の賢者とまで呼ばれているほどだ。ここでもまた、何か一つのアイデアで、大きな成果を生み出すことができるのではなかろうか?

ここで考えるべきは、この領の特色であろう。ラトイン湖があるということは、魚や貝を前面に押し出すべきか? いや、領はかなり広く、ラトイン湖に関わらない村もなくはない。そんな村々でも共通するような何かがあれば、それを使いたい……まぁ、ないのだが。

リョウマは考えて、一つどころかたくさんのアイデアを領主に紹介していく。そのどれも魅力的で、彼のプレゼン能力の高さが伺える。この力は是非ともブログ主にも分けて欲しいところである。

 

ギルムの街に戻っても、彼の仕事に休みはない。というかラトイン湖には修行に行っていたと思うのだが、どうして商売のタネが増え、横の繋がりが増え、財産が増え、スライムが増え……という多大なる影響力と資材を蓄えることになっているのだろう。不思議なものだ。

スローライフのはずなのに目まぐるしい程に財産が膨れていく。彼は働かなければ死ぬ病気なのかもしれない。

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