※ネタバレをしないように書いています。
えっ、この程度で!?
情報
作者:吉岡剛
イラスト:菊池政治
ざっくりあらすじ
立太子の儀式が開催される最中、隣国のスイード王国に魔人が襲来していた。シシリー一行は急いで救出へと向かう。
感想などなど
ストレスフリーが徹底されている本作。これからもギャグ全振りかと思いきや、今回は唐突なシリアスが投入される。しかも、かなり重い。
シリアスの内容をざっくり書くと、「シュトロノームの過去」である。先ほど『唐突なシリアス』と書いたが、勘が良い人ならば自身を魔人化させてまで(正確に言うと違うのだが)、帝国を滅ぼそうとした人間の過去が相当なものだろうと想像できるはずだ。おそらく、その想像通りの凄惨な過去が描かれている。「賢者の孫」を読んでいて、こんな気持ちにさせられようとは……。
それにしても、疑問に思った人はいないだろうか。
シュトロノームの目的は「帝国を滅ぼすこと」だとして、何故人々を魔人化させる必要があるのだろうか?
魔人はそれ一体で一国を滅ぼすだけの力を有する。シュトロノームはシンと対等にやり合った唯一の存在でもあるのだし、空も飛べるし、部隊相手に余裕で勝っている。つまり魔法使いとしての実力も申し分ない。無駄に魔人を増やして戦力を増やす必要なく、シュトロノーム単体で十分すぎる程なのだ。
それなのに、彼は帝国の人々を次々に魔人化させている。そこには『帝国を滅ぼす』だけではない理由というものが存在しているはずなのだ。魔人化してすぐにでも滅ぼそうとはせず、一度『アールスハイド王国』にやって来て何やかんやするという遠回りまでして、何を考えているのか。
そんなことを考えてみると、作品を楽しめるかもしれません。
さて、今回はシンが様々な意味で成長……? いや、何だろう。なんと言うべきか……? 挙げてくとキリがないのですが、たった一人で一国家に匹敵するのではなかろうかと思われる財産を築き上げます。
彼からしてみれば現世にあったものを付与魔法で作ったら、世界の構造を変えてしまうようなものまで作ってしまった! という話です。ベルが発明した電話、ライト兄弟が開発した飛行機……思い浮かぶのは過去の偉人達……まぁ、とにかくそんな彼らに匹敵するような開発を行ったと思って欲しい。いやぁ、歴史が変わる瞬間を見てしまいました。
それに加え、今回は一国を救ってしまいます。ある意味ネタバレですが、問題はないでしょう。
シュトロノームが生み出した魔人達は、アールスハイド王国の隣国であるスイード王国に攻め入ります。その間、立太子の儀式(雰囲気としてはお祭り騒ぎをする天皇即位の儀式:立太子 - Wikipedia)が開催されていましたが、隣国の危機ということでシンの率いる『究極魔法研究会』……いや、違いましたね『アルティメット・マジシャンズ』(シンが命名)が救国のために空を飛びました。
何ということでしょう。恐ろしいほどにテンポが早いです。
「救国の戦いにはかなりのページ数が割かれるんだろうなぁ」とお思いの方多いかもしれません。残念なことに、本作ではシン達が強すぎるが故、戦闘はすぐに決着が付いてしまいます。また、戦闘シーンの大半が台詞で構成されているため、大変読みやすい作品となっています。
あっさりと読み進めることができる物語として、是非一度手に取ってみてはいかがでしょうか。