工大生のメモ帳

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転生したら剣でした4 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 4

ざっくりあらすじ

月宴祭が行われるというバルボラで、料理ギルドを発見した師匠とフラン。そこで近々『料理コンテスト』というものが開催されることを知ったフランは、師匠の作った世界一のカレーを広めるべく、そのコンテストに参加することにするが――。

感想などなど

カレー粉って便利ですよね。

とりあえず味に困ったら、突っ込んでおけばカレー味になる。塩味とも醤油味とも違うカレー味にしておけば、よっぽどのことは起きないという安心感がある。暑さで食欲が減衰してたとしても、あの辛さを求めてしまうのは人間の性なのだろうか。

そんなカレーがこの異世界には存在しない。

香辛料はたくさんあって市場で入手できる辺り、料理に使うという下地はあるようだが、それらを組み合わせてカレーのようなスープ状に形成する発想がないのだろうか。一人暮らし歴の長い師匠が、異世界で作った料理の一つがカレーであり、それがフランの舌には非常にマッチした。

そこからいろいろな人に料理として提供し、それらがことごとくヒット。多くの人がカレーのことをおいしいと評価してくれた。

ただ一人、料理ギルドの長を除いて。

料理に真剣に向き合ってきた男・メッキャムは、カレーを食べ「悪くない」「中々の完成度だ」「珍しさもあり、わしでさえ初めて食した」と中々に好感触。しかしながら、「料理人の矜持が感じられん」と一刀両断した。

まぁ、カレーというものは一人暮らしでも手軽に作れ、大量に作って後日の作り置きとかにする家庭料理である。そこに矜持を求められても、一般人から異世界に転生した師匠には荷が重すぎる。

そんなギルド長の言葉に納得できないのがフランという少女だ。彼女にとって、師匠のカレーこそが世界一の料理であり、それを認めないギルド長は敵である。そんな敵にカレーを美味いと認めさせるため、フランは『料理コンテスト』に参加することに決め、最高の食材を求めて師匠片手に狩りに出たりする。

ついでにフランの妨害工作を仕掛けてくる輩がいるのでボコボコにしつつ、世直しもするという一石二鳥どころか五鳥くらい取れそうなお得な物語が、テンポよく続いていく。

これがまぁ、楽しい。

 

貴族に代表されるような権力者が、悪事に手を染めることは悲しいことに珍しくないと思う。権力が人をそういう道に引きずり込むのか、はたまた生まれ持った性根がそのような行動を誘発するのか。その判断はおそらく本人にすらできない。

ただ今回の一連の黒幕は、生まれ持った性根がそうさせたのだと思う。

自分の利益のためならば、他人の犠牲なんて気にしない。それこそフランという少女が死のうがどうなろうが関係ないという全力の悪意をひしひしと感じた。

今回の騒動を日本にあるもので例えるならば、「依存性の高い薬物を街の住民全員に飲ませようとした」という内容になる。しかもその薬物に対する治癒薬は簡単に作れず、飲んだことに気づいた時には手遅れで、その被害は街だけにとどまらず全世界に広がる可能性だってあったと聞くと、事の重大さを理解できるのではないだろうか。

フランが街を救えたのは、ほんの偶然。敵の計画が失敗していたのは、かなーり運が悪かったと言わざるを得ない。しかしそのような状況でありながら、ギリギリまで足掻いて計画成功の一歩手前まで街を追い詰めた手腕は見事と言わざるを得ない。悪役が持つ独自の矜持もしっかりと描かれている辺り、敵としての格も上がっていく。

最後の最後のバトルは、手に汗握る白熱したものとなっていく。

この作品は最後の盛り上げが本当に上手い。途中までしか読んでいないという方も、最後まで読むことをお勧めしたい。

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