工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

転生したら剣でした3 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻
感想リスト

※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 3

ざっくりあらすじ

師匠とフランは、ダンジョン都市ウルムットへ向かう道中で、港町ダーズに立ち寄る。そこで島国シードランで国王の代替わりが起き、その混乱に乗じて子供をさらって密輸する組織に襲われてしまう。当然のように返り討ちにするが、ついでにさらわれた子供達の救出に動き出す。

感想などなど

この作品の良いところはテンポの良さではないかと思う。

第二巻の前半では昇級試験の任務を受け、ウルシという超強力な魔獣を従えるという超強化。ランクA冒険者アマンダと親睦を深め、スキルに関する造詣も深められた。設定を学びつつ、良い感じに危機感も煽られる戦闘も楽しめる内容だった。

後半は依頼の報酬として、入る資格を得たウルムットのダンジョンへ向かう道中、死霊術士のジャン・ドゥービーと共に、浮遊島にあるゾンビ系モンスターが大量発生しているダンジョン攻略に挑んだ。

ジャンの死霊術士としての戦い方であるモンスターの召喚は、フランとはまた違った面白さがあった。しかも、このジャンという男は、おそらくフランよりも強いであろう。しかしながら訪れる危機。このダンジョンの難度はかなり高く、最後までギリギリの戦いであった。

最後の死霊の王とのバトルは、特別なインテリジェンス・ウェポンの師匠でなければ、フランもジャンももろとも死んでいたことだろう。師匠の中には、前世の師匠の魂だけでなく、別の何かが入っていることが分かったという超重要情報が明かされつつ、ダンジョンの最深にいた死霊の王の真実は涙を誘う。

第二巻単体でまとまった内容となっており、ネット小説特有の収まりの悪い締めではなく、かなりお勧めしやすい内容となっている。第三巻もまた同じように、中途半端で不完全燃焼な終わりではなく、綺麗に締められている辺り、書籍化に当たって調整されたのではとさえ疑ってしまう。

それくらい綺麗にまとまった第三巻、早速感想を書き殴っていこう。

 

物語はまず港町ダーズから始まる。そこでは近々祭りがあるらしく、宿を借りようにも借りられないくらい人がごった返していた。フランもまた、宿からあぶれて困り果てる者の一人であり、しかしながらDランク冒険者。冒険者ギルドを通じて泊まる当てができた。持つべきものは権力である。

そんな彼女であるが、知名度はあまりない。見た目は黒猫族の少女で、強そうに見えないどころか冒険者にだって見えない。だからこそ彼女を舐めてかかる大人達の襲撃に遭うのも、ある種の必要経費と言えるのかもしれない。

師匠の力を抜きにしたって、ウルシの従魔、まだまだ先の見えない魔法の才を前にして、子供ばかりを狙う大人達程度ならば返り討ちにできる。腕を落としてヒールを繰り返す、えげつない拷問も真顔でこなす少女の姿は、どういう気持ちで読めば良いのか分からなくなってくる。まぁ、男達の自業自得ではあるのだが。

その拷問により判明した情報は、『島国シードランで国王の代替わりが起きた』ということ、そしてそれにより『島国シードランは混乱し情勢が乱れている』ということ。情勢が乱れるということは、犯罪者達が動きやすいということに繋がる。フランを襲った者達は、シードランに活動拠点を置き、混乱に乗じて子供達を拉致し密輸しているというのだ。

ウルムッドに向かう道中、ついでに子供達を救出に向かうフランと師匠。その囚われた者達がいる牢獄に、なんとフィリアース王国の第六、第七王位継承者がいたのだから驚きだ。

普通、そんな重要人物には護衛がついていると思うのだが……どうやらやんちゃな者達であるらしく、護衛の目をかいくぐって抜け出して誘拐されたらしい。王子だと知られていなかったことが不幸中の幸いか。

王子の名前はフルト、王女の名前はサティア。

二人のお願いで、国へと戻る船の護衛としてフランは雇われる形で乗船することに。ウルムッドへ向かうには、どちらにせよ船には乗る必要がある。しかも祭りの影響で船の予約は今からでは取れないらしい。

ただその船旅が、苛烈な大冒険――一国のその後を決める戦いの幕開けだとは知るよしもない。

 

船旅といえば。

海特有の魔獣などは、古今東西の物語で描かれている。クラーケンなどが王道であるが、今回は巨大ミミズのような生物・ミドガルズオルムという海蛇の襲撃を受けた。動く者は何でも口に入れ飲み込んでしまう巨大生物を相手に、師匠で無双……といいたいところだが、師匠は役立たずだったので、即死能力を持つ魔剣・デスゲイズで辛勝。

海賊の襲撃などは定番の展開である。海賊の船団が列をなして大挙してきて、それらを空から魔法をぶっ放して倒すシーンなどは快感すら覚える。もう彼女一人で全部なんとかなるんじゃね?

といったところで、彼女ではどうしようもない敵が現れる。シードラン国の海軍である。もしもここでフランが空から魔法をぶっ放し沈めてしまえば、シードランとフィリアース王国の戦争になりかねない。

彼女は結局はただの冒険者。国家間の問題には口を挟めない。

この時はまだ……まさかここから国家を救う英雄になるとは、想像もできないだろう。波乱の展開に満ちた英雄譚であった。

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻
感想リスト