工大生のメモ帳

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イリヤの空、UFOの夏 その3 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(一巻の感想はこちら→イリヤの空、UFOの夏 その1 感想 - 工大生のメモ帳

夏。日常の終わり。爆発。

情報

作者:秋山瑞人

イラスト:駒都えーじ

ざっくりあらすじ

浅羽を巡る恋の三角関係に終止符?! 『無銭飲食列伝』

様々な憶測飛び交う爆発事故の調査に乗り出す水前寺。彼が目にする物とは・・・・・・

『水前寺応答せよ』

浅羽がまだ一年生の頃を描いた物語 『番外編・ESPの冬』

感想などなど

その1,その2と綴られる続けたちょっと変わった女子中学生との日常。一夏の忘れがたい思い出が浅羽にはできたことでしょう。しかし伊里野の生活や背景には謎が相変わらず多く、回収されていない伏線がただただ積み重ねられ続けている状態です。

物語の始まりは主人公、浅羽の幼なじみであり、その2で浅羽をファイアーストームに誘ったつもりで誘えていなかった周藤晶穂視点で描かれていきます。

今まで散々浅羽を気にかけ、学祭では必死に浅羽の姿を探していた晶穂。

浅羽について回る謎多き美少女、伊里野。

二人は互いに良い印象を抱いてはいない模様。そんな二人の意地と意地がぶつかり合い、戦いは大食い勝負へともつれ込む。

ここでちょっと注目したいのが、晶穂に対抗して伊里野も意地を張っているシーン。今まで無表情で何を考えているか分からなかった彼女が、県名に飯に食らいついていくシーンは中々感慨深い物があります。

何故大食い勝負? という突っ込みはしないでいただきたい。これが彼女たちなりの勝負というやつなのです。

この『無銭飲食列伝』だけでも、そこら辺のネット小説一冊分に匹敵する内容の濃さと面白さを秘めていると思います。

一読の価値はあるかと。

 

そして次は水前寺メイン回。と思いきや前編は、浅羽達と伊里野達の物語。そこでは友達と一緒にボウリングを楽しむ姿を見ることができます。

伊里野が殴られた(ように見せられた)り、髪が真っ白になっていたりしますが、あくまでまだ日常の延長線上。

問題となってくるのは『水前寺応答せよ・後編』

クラスの大半が疎開という形で遠方に行ってしまい、席はがら空きの状態。戦争という色が一気に濃くなっていく。

そして伊里野の視力が失われる。

今まで何度も考えてきた。何故伊里野は基地に住んでいるのか。度々呼び戻される電話の正体は? あれはどこからかかってくるのか? 何故彼女は殴られてでも基地に戻らなければいけないのか? 何故彼女の髪は一気に白くなってしまったのか?

トドメは視力の喪失。

浅羽直之は察する。鹿尾が何をしているのか。正確には分からなくても、彼女が自分たちとは違う世界で闘っているということを。

彼は声を荒げる。

「何故大人が闘わないのか」

「何故伊里野が闘わないといけないのか」

そんな中学生の言葉に大人は、

「なんにも知らない奴の偽善なんてただの無責任よ」と。

 

物語は急加速度的に日常から遠ざかっていく。今まで何も知らなかった浅羽直之は行動を開始する。

しかし彼はただの平凡な男子中学生であり、特別な力なんて持っていない。大人の女性一人にも喧嘩になれば負けてしまう。相手はそんじょそこらの大人ではない、戦争に勝つための軍隊である。

しかし彼は行動を開始する。

伊里野加奈と浅羽直之二人の逃避行が幕を開ける。

 

何度も言わせて貰おう。浅羽直之は弱い。もうめちゃくちゃ弱い。多分妹の方が強い。

しかし伊里野加奈は、戦場に必要とされている存在。彼女は最強の癖であり、唯一といってもいい対抗手段であって、世界の命運を握っている。

浅羽直之もそんなことは分かっている。懸命に抗おうとする彼の行動に皆心打たれるはずである。

イリヤの空、UFOの夏 その3 (電撃文庫)

イリヤの空、UFOの夏 その3 (電撃文庫)