工大生のメモ帳

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なれる!SE11 絶対管理職宣言 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

責任者は大変だ

情報

作者:夏海公司

イラスト:Ixy

ざっくりあらすじ

スルガシステムがデジタル・ヴィレッジという会社を買収し、一緒のビルで働くことになった。すると何故か新入社員である桜坂工兵が、デジタル・ヴィレッジ社の部長として就任することになり……

感想などなど

責任者というのはつくづく大変な仕事である。自身の仕事もあるというのに、部下に気を配り仕事を円滑に進むように調整し、そんな部下が失敗した場合に一番頭を下げるのは部下本人よりも上司の方が多いであろう。

当然、そんな責任者に就く人間というのはキャリアであったり、そうでなくとも多くの業務経験を積んだ人間であるべきというのは、社会経験のない方でも容易く想像できることではないだろうか。

新人には圧倒的に経験というものが足りない。困っている部下を支えるのは、そういった上司の経験から培われた助言であることは往々にしてある。また頭を下げる相手との信頼関係も、長年その業界で働いてきた人間が頭を下げた方が説得力があるというものだ。

しかし、このスルガシステムには人が少ない。少数精鋭と言えば聞こえはいいかもしれないが、実際の所、実務経験を積む前にドロップアウトするか逃げ出すかしてしまうからだろう。残っている人間は室見立華を代表とする一癖も二癖も三癖もあるような、表情が違う生き残りばかりである。

そういったシワ寄せというものは誰かに行くもので、この会社では桜坂工兵というあまりにも便利すぎる、ちょっとのことでは壊れそうにない人間に向くのであった。今回はあらすじでも示した通り、部長としての業務が放り投げられることとなる。

 

部長といっても、(業務内容だけを聞くと)とても簡単そうに思えてしまうのが不思議な所だ。まぁ、実際の部長になったという訳ではなくデジタル・ヴィレッジとスルガシステムの橋渡し的な存在として、色々な雑務をこなす便利屋……という方がしっくり来るかもしれない。

具体的にはデジタル・ヴィレッジから舞い込む残業申請や出張費用申請などを受け取り、印鑑を押して了承するといった仕事だ。よほどのことがない限り、残業申請というものは通るらしく(まぁ、スルガシステムだしね)ほぼほぼ流れ作業のようなものだ……と思っていただけで実際は違う。

この辺り、かなり労働に関する法律が引用されて説明されていく。細かな点を省いて、超ざっくりと本作に起こる事件というものを説明すると、『残業や出張が多すぎて、利益を出す所か赤字になってるよ』という内容である。

会社はお遊びサークルではない。どうにかして利益を出さなければ、潰れてしまうというのは資本主義の日本においては当たり前のことである。だからこそ利益を追求していくことが大事なのだ。

その辺りの配慮というものが、このデジタル・ヴィレッジでは欠けている。必死に働いているということは、読んでいけば何となく分かる。しかし、その全てが利益になっていないということを考えると、何というかむなしさを感じる。

努力したという報告を喜ぶのは義務教育までである。

 

デジタル・ヴィレッジには社長らしい社長というものがいない。その理由は最後まで読んでいけば分かることなので読んで欲しい。代わりにエリザベート・ラビス・アカサカという日本語しか喋れないハーフが、全体のまとめ役を担っているらしい。

銀白色の毛髪に、雪のように白い肌。緑色の目をした彼女はとても美しい。

そんな彼女と仲良くなっていく桜坂と、そんな様子に嫉妬する女性陣にニマニマしつつ、仮染めではあっても部長となってしまった桜坂の社畜根性が炸裂し、これまでの経験で得た人脈をフルで活用しながら勢い良く進んでいく物語の展開は、鮮やかだったと言えよう。

桜坂工兵が有能たる所以は、その幅広すぎる人脈にあるような気がする。コミュ力ってやっぱり重要なんだよな、とこれから社会人になるであろう後輩達には伝えたい。

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