※ネタバレをしないように書いています。
※これまで(出版順)のネタバレを含みます。
忘却の理由。
情報
作者:上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
ざっくりあらすじ
私が目覚めた時、あらゆる記憶を失っていた。
あったのは奇妙な黒帽子と黒マント、あらゆるものをバラバラにする能力……そう、それはまるでブギーポップのようであって――。
感想などなど
物語は記憶を失った女子高生の視点から始まっていく。どうやら『親の存在』から『自分の過去』に至るまでの記憶を ”忘却” しているようである。しかし『友人の名前』をぼんやりと覚えていたりと、何とも中途半端な忘却だ。
しかも、手元には黒帽子と黒マントというブギーポップを連想する小道具を持っており、物を切り刻む能力を持っているという。
実は彼女がブギーポップだった……?
いや、まぁ、ブギーポップの正体は宮下藤花であるということは分かっているのだが、彼女の周りの人間ならまだしも彼女自身が「もしかして……でも……」というどっちつかずな状況な訳で、問題はややこしさを増していく。
そんな主人公と、ブギーポップに殺して貰いたいという奇妙な女子高生、自ら合成人間であると名乗る何処か抜けた統和機構の合成人間兼女子高生という個性的な三人と共に、最近街を襲う事件を追いかけることになる。
その間にブギーポップのコスプレをしたりするので、可愛らしいブギーポップ三人衆を見れたりする。可愛い。
さて、そんな彼女らが追いかける事件をざっくりと紹介しよう。
超簡単に言ってしまうと動き出す死体――ゾンビの出現だ。例えば死んだはずの犬やカラスが動き出したりする。
といっても ”バイオハザード” のように生物兵器というわけではないようである。何せMPLS能力者を殺すことを目的とする統和機構が出張ってきているのだ。どんな能力によって生み出されたゾンビなのかは分からないが、多かれ少なかれMPLS能力者が絡んでいることは間違いないだろう。
しかし、事件は公にされていない。今のところ一般人が襲われたということはないらしい……ん? いや、ブギーポップのコスプレをした主人公が屋上で黄昏れていると、ゾンビ化したカラスに襲撃されている。
彼女は一般人ではない……? まぁ、その際に、能力によってゾンビカラスをバラバラにしているので、明らかに何処にでもいる普通の学生ではないのだが。
イマジネーター……水乃星透子……覚えている人はいるだろうか。自分は念のため過去作を読み返した。これから本作を読もうとしている人は、「ブギーポップは笑わない(ブギーポップは笑わない 感想)」や「ブギーポップVSイマジネーター(ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター PART1 感想)」を読むことをおすすめしたい。
実際読まなくてもストーリーの大筋は理解できるし、上記作品で分からなかったことが分かるという意味では、本作から読んでも良いかもしれない。
過去作を全て読んでいる自分は「お前(水乃星透子)、ここで出てくるんかい!」と何度も突っ込みを入れていた。それもそのはず、上記二作品のみならず、水乃星透子の名前は「自殺した女子高生」として登場している。イマジネーターも同様だ。
そんな彼女に関しては謎多い存在として語られている。校舎の屋上から飛び降りて自殺したというが、遺書はないため動機も分からないままだった。
ブギーポップに殺されたのか? はたまた、統和機構? もしくはもっと別の敵? と色々と憶測は立てられていたが、本作ではかなり重要な立ち位置で登場する。
そういった設定の回収がブギーポップシリーズの醍醐味の一つでもあると思うので、やはり過去作を読むことをおすすめしたい。