※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
人類を滅ぼすためのシステム
情報
作者:夏海公司
イラスト:遠坂あさぎ
ざっくりあらすじ
ザイの正体を知り、グリペンの過酷な運命を知った慧。その上で、グリペンのこれまでの失敗しつつけた経験を使ってザイ達と戦い、グリペンを守ることを誓った。そんな彼らにグリペンの知らない攻撃が襲いかかる。
感想などなど
七巻(ガーリー・エアフォースⅦ)でザイの正体を知り、八巻(ガーリー・エアフォースⅧ)でザイと戦う覚悟をした慧。ようやく本当の戦いが始まるといったところで今回の九巻。プロローグでは順調にザイを倒しつつ、敵の本拠地を叩く様子が描かれています。
どうやらグリペンのこれまで辿ってきた数千に上るループの記憶が生きているようで、戦闘による負傷者は0。
これはもしや、もしかするのでは? とほのかな期待を抱きますが、やはりそう簡単にはいきません。
敵は遠い未来の技術によって生み出された存在。我々の科学技術は遙かに凌駕する存在であり、常識が通用するはずがないということを再認識させられます。
しかし、順調に敵を叩けていることは事実です。敵の裏をつくことは、これまでの数千ものパターンを知っているグリペンの記憶を使えば容易いものです。
敵からしてみれば、何をやっても裏目にでる状態で、次々と本拠地が叩かれていく。しかも、これまで圧倒的大差で勝っていた相手にそんなことをされるのですから、何か策を出さなければこのままやられてしまいます。
そこで出てくるのが、アンフィジカルレイヤー。
あまりこのブログでは作品内のみでしか使われないような横文字は使いたくないのですが、今回ばかりは仕方ありません。
簡単に言ってしまえば「現実と虚空が混じり合ったような空間」。
……うん、簡単じゃありませんでしたね。空母シャルル・ドゴールで慧達が紛れ込み、ミニファントムの登場した空間といえば、分かりやすいでしょうか。
その空間では距離も空間もめちゃくちゃになって、己の認識が歪められてしまいます。当然戦うこともままなりません。
そんな空間が突如として街中に現れたりしたらどうでしょう?
きっと、想像できないようなことが起こるに違いありません。
上記のザイの攻撃が、表向きは「街が消える」という事件として出てくることになります。一つの街が突如として消えるのは、まるでホラーであり、敵が本気を出してきたことを示しています。
さらに厄介なのは、そんな世界を巻き込んだ大事件がグリペンの記憶にないということ。今回ばかりはグリペンの記憶はあまり役に立たないかも知れません。
さて、街が消えていったと思えば、次は海上に陸地が現れたりします。恐ろしいほどの早さで敵の攻撃が進んでいきます。敵の能力もSFチックであるために、説明も自然と横文字が多くなり、様々な用語か飛び交います。
理解としては「ザイが能力でワームホール開けて裏を突きやすくしたよ。街が消えたりしたのは準備段階だよ」程度で大丈夫……かと。
このままでは、これまでレーダーで敵の接近は判別できたものが、今後は突然目の前に現れるようなザイの強襲にも備えなければいけなくなります。しかも敵は疲れを知らないシステムであり、人の絶滅にまた一歩近づいてしまいます。
何とかしてワームホールの破壊をしなければいけないのですが、果たして策はあるのでしょうか。
今回注目すべきなのは、これまで長々と書き連ねたザイの能力だけではありません。このような常識知らずで圧倒的戦力を誇る敵を倒すには、日本だけではなく各国が協力しなければならないのは明白です。
アメリカはこれまで、それなりに協力してくれました。中国もそれなり、モンゴルも自身の戦力がない分、別の面で協力してくれていたようです。
問題はロシア。四巻(ガーリー・エアフォースⅣ)のベルクトの事件は、今でも心に残っている人も多いのではないでしょうか。ロシアから逃げてきたベルクトが空に突っ込んで消滅……このあらましだけ聞けば、日本に対して良い印象を抱かないのは当然のことでしょう。
といっても、どうやらロシア上層部は大して気にも留めていないようです。気にしているのはロシアの残されたアニマ達ことシュラーヴリク御一行。
このまま対立したままでは人類を守れません。協力は必要不可欠なのです。
ちょっとずつ歩みを進める慧、グリペンはポンコツで、ファントムは冷たくあしらい……シュラーヴリク達は信用できないからという理由で戦いを挑んでくる。
そんな彼らでチームを組んでいくことになるのですが、果たして上手くいくのやら。
SF色がさらに色濃くなってきました。ようやくはっきりした敵は、未来の作り出したシステムであり、常識の通用しない相手です。
対してこちらはポンコツのグリペンの記憶を頼りにしなければいけません。
散々ポンコツと書いていますが、「例え覚えても、活用できなきゃ意味がないんだよなぁ」という教訓を教えてくれたので、一応感謝していないこともないかもしれません。