工大生のメモ帳

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ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまで(出版順)のネタバレを含みます。

恋の三角関係△

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:緒方剛志

ざっくりあらすじ

告白することもできず失恋した少女。自分の好きな相手の好きな人が、自分の親友だと知った少女。好きな相手が落ち込む様子をただ見ているしかできない少年。

そんな三人の三角関係に、”最強” に恋する合成人間が加わる。

恋の行く末と世界の敵の正体とは……。

感想などなど

さて、今回は複雑に入り乱れる恋愛模様。しかし、ドロドロとした感じはなく、青春の一つのほろ苦い思い出として、本作はすんなりと読むことができます。

またブギーポップシリーズの特徴として頻繁に上げられる、ストーリーのややこしさが本作ではありません。

……ブギーポップシリーズ読みすぎて慣れてる説も否定できませんが……登場人物が割としっかりと時系列に則って説明してくれるシーンがあるのが、大きいかと思います。

これまでの繋がりも多数見て取れる本作の感想を書いていきましょう。

 

まず本作の本筋で描かれる三角関係を構成している三人について説明しよう。三人は言わずもがなストーリーの根幹を担っている。

まずは『告白することもできずに失恋した少女』こと館川睦美。彼女は自分が好きな竹田啓司に告白する前にフラれ――彼女ができてしまった、ことで落ち込んでいる。

(竹田啓司……は宮下藤花(ブギーポップ)の彼氏であるが、本作にはあまり関係ない)

告白することもできずに終わることなんて日常茶飯事……あれ、涙が(ry。

次に『自分の好きな相手の好きな人が、自分の親友だと知った少女』こと小森時枝、彼女の好きな人は後述、親友は上に示した館川睦美のことだ。

ある意味、彼女も『告白することもできずに失恋した』とも取れる状況だ。なにせ自分の好きな相手は自分のことなんて眼中にないのが、誰よりも彼のことを見ていた彼女には分かってしまうのだ。

どうすればいいのだろう、と思い悩む様が彼女の視点で赤裸々に描かれている。「彼女が彼を好きになってしまったら……」という悩みや、後々の展開で彼のことを誰よりも心配する様は、まさに恋する乙女の姿であり、読んでいて楽しい。

最後は『好きな相手が落ち込む様子をただ見ているしかできない少年』こと真下幹也である。彼の性格はとても掴みにくい。彼視点で描かれることがあまりないためだ。どうにも三角関係をほとんど意識せず、裏で進行していく事件をぼんやりと、しかし冷静に眺めている。

自分は最初「こいつが世界の敵なのでは?」と思いながら読んでいた。そう思っていた人も少なくないと思う。

……と書いてしまった時点で、「あぁ、こいつは世界の敵じゃないんだな」と思われるだろうが、そう単純じゃないのがブギーポップシリーズだ。

真相は本作を読んで確認して貰いたい。

 

そして大事なキャラ四人目として、『”最強” に恋する合成人間』ことメロー・イエローも外せない。彼女が恋する ”最強” とはブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕にて初登場、フォルテッシモのことである。そちらの方は読まなくてもストーリーは理解できる。とりあえずめちゃくちゃ強い奴と思って貰えればいい。

合成人間が恋するの? と思う方もいるかもしれないが、もうその答えはブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター PART1にて恋する人造人間が登場しているので、そちらを参照。ちなみに本作で登場するスプーキーEという合成人間の初出もこの作品だ。

彼女の能力は「空気を操る」というもの。例えば、空気を弾丸のようにして飛ばすことができたり、固めてその場にとどめておくことで上に乗ることもできる。かなり汎用性の高い能力だ。

しかし、最強であるフォルテッシモには勝てない。あえなく敗北した彼女は、彼に恋した。合成人間の恋心はよく分からないが、強者に惚れたといったところだろうか。

合成人間であるはずの彼女が、女子高生と恋バナをしている様子は何とも微笑ましい。

……しかし、そんなほんわかしたストーリーが続くはずもない。世界の敵が世界に牙をむくとき、それは四人の日常が脅かされるも同義なのだ。

 

意外な真実はあっさりと明かされ、そこから怒濤の展開が続いていく。

世界の敵の正体と能力、過去に起きた出来事。それらが四人の人生に深く関わっていることに気がつき、「どう終わらせるんだろ?」というドキドキが最高潮に達した時に現れるブギーポップの姿には、思わず声も出ちゃいます。

能力者バトル的要素が強くなって来た中、かなりドラマ的要素が強い作品でした。

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