工大生のメモ帳

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転生したら剣でした9 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 9

ざっくりあらすじ

黒猫族の村を守るために戦い続けるフランは、助けに来てくれたメアとともに襲撃者を撃破する。しかし黒幕にして最強の黒猫族ミューレリアが現れた。彼女は邪神を復活させようとして、一族の進化が封印される元凶で――。

感想などなど

一体で村を蹂躙できるような魔獣が、十、二十は下らない膨大な数押し寄せてきた。そいつらを相手取って単身で戦い、一度は勝ったかと思いきや、千体を超える邪人の軍勢が平原にズラリと並んでいる様を見せつけらた時の絶望感は、凄まじいものがあった。

だからこそ救援が来たときに垣間見える希望の光が、あまりに眩しい。

第九巻も引き続いて黒猫族の村を守るための戦いが続いていく。味方のいなかった戦場に、心強い仲間が増えていく展開は、読んでいて楽しいものだ。友人となった獣人の少女・メアが駆けつけてくれたシーンなど、かっこよくて惚れそうになる。特に彼女が獣王の長女だと判明したりと、戦力的にもとても心強い。

黒猫族の村人たちも、ただ守られているだけの現状を恥じ、少しずつ強くなっていこうという意味も垣間見えた。この戦いが終わった先の未来にも、希望の光が照っている。心強い限りである。

しかし、それに合わせるかのように強くなっていく敵……第八巻の絶望感もかなりのものだったが、第九巻もなかなかのものであると言っておこう。その絶望感の中でも一際際立つのは、黒幕ミューレリアの登場だろうか。

ここで少し振り返らせて欲しい。どうして黒猫族の進化が封印されたのか?

その理由として、『過去に邪神の力を利用し黒猫族に取り入れ、種族全体を邪人化しようと画策した者がいた』という風に説明されている。そのため邪人を何体討伐しないといけないという風な、縛りによって進化できないようにされていた。

そこから始まる黒猫族に対する差別や虐めは、これまで幾度となく描かれてきた。そのすべての元凶が、黒幕ミューレリアである。

 

このミューレリアが黒幕というだけあって強い。そもそも膨大な数の邪人を操っていたのは彼女であるし、第八巻でめちゃくちゃ苦労させられたワルキューレやデュラハンが、一斉にフランに攻撃を仕掛けてくると敗色濃厚と言わざるを得ない。それらの猛攻を潜り抜け、ミューレリアに到達したとしても単純な火力不足でダメージが通らない。

どうしようもねぇ……。

そんな中で微かに見えた可能性、それは「ミューレリアがインテリジェンスウェポン(=師匠)に興味を持ったこと」。師匠はフラン以外の何者かが持つと、そのものに神罰が下るようになっている。ミューレリアとて例外ではないだろう。

フランと完全に引きはがされた師匠の一世一代の大勝負が始まった。

ミューレリアは師匠が言葉を喋れることに驚きつつ、師匠を調べていく。そして、過去に死んだはずの自分がよみがえった理由も、淡々と語りだす。それを聞きつつ、師匠は情報を整理していく。そこに勝ちの目を見出すために。

そもそもミューレリアは大昔に死んでいるはずだ。しかしながらここに間違いなくいる。そのようなことになっているのはどうしてか?

大昔にどうして邪神の力を頼ろうとしたのか?

彼女が語る復習とはなにか?

それらの謎の裏にある物語が、ブログ主は好きである。

 

ミューレリアの登場の絶望から、仲間が駆けつけてくることで垣間見える希望――とくに獣王の師匠・キアラ婆さんとか――そして見えてくる更なる黒幕の姿、ミューレリアの真実……二転三転する展開が目白押しで、一気読みしてしまう。

とくにラストバトルの総力戦で、読者の盛り上がりも最高潮に達する。最高の第九巻であった。

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