※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
間違いだらけの青春模様
情報
作者:渡 航
イラスト:ぽんかん⑧
ざっくりあらすじ
雪ノ下雪乃と妙な戦いをすることになった比企谷八幡。そんな二人の奉仕部には、由比ヶ浜結衣が、いつの間にやら入部。こうして三人になった奉仕部には奇妙な依頼が舞い込み始める。
感想などなど
雪乃下雪乃と由比ヶ浜結衣というルックス的レベルが異様に高い二人と、ひん曲がった性根を持っている比企谷八幡の三人による、奉仕部というこれまた良く分からない委員会にて始まるラブコメの第二巻。
本日舞い込む依頼は大きく二つ。一つずつ、ネタバレをしないよう細心の注意を払って感想を書いていこう。
まず一つ目の事件は「チェーンメール事件」。
チェーンメールとは「今すぐ〇人に、このメールを送らなければ~」といったように、メールを回させるように煽るような内容が書かれた迷惑メールのことを指します。まぁ、そのような内容のメールならば、誰もが一度は受けたことがあるのではないだろうか? 迷惑ではあるけれど、ブロックするなり無視するなりで済むような問題です。奉仕部に相談するような内容ではないよう思います。
しかし、クラスのムードメーカーであり、顔も良く、運動神経も良い葉山隼人は、わざわざ相談にやって来ました(最初は平塚静先生に言ったようですが、奉仕部に回された)。
問題はチェーンメールの内容です。
『戸部は稲毛のカラーギャングの仲間でゲーセンで西高狩りをしていた』
『大和は三股かけている最低のクズ野郎』
『大岡は練習試合で相手校のエースを潰すためにラフプレーをしていた』
……といったような、クラスメイトをけなす内容の回すよう煽るメールが出回っていたのです。ある種、面と向かっていう悪口よりもたちが悪いです。自分は顔を見せず安全な場所から声を荒げる性格の悪さがにじみ出ます。
そんなメール問題を解決すべく、葉山隼人が奉仕部に「犯人の特定」……ではなく、「事態を丸く収める方法を知りたい」という。
……なるほど、彼としてはクラスの和を乱さず、事態の収拾を図りたいのでしょう。その和には、クラスメイトの(おそらく)デマをまき散らすような性根の腐った犯人も入っているのです。聖人ですね。
さて、犯人とは別ベクトルに性根のひん曲がった比企谷八幡は、この事態をどのように収拾つけるのでしょうか?
さて、二つ目の事件は「クラスメイトがバイトを始めた事件」。
……高校生がバイトをする……。自分の通っていた自称進学校では、バイトは原則禁止でした。大抵の進学校ではバイト禁止なのではないでしょうか? まぁ、地域差もあるでしょうが。
比企谷八幡の通う高校も例外ではありません。バイトは原則禁止であり、ましてや明け方まで拘束されるようなバイトはできません。高校どころか、法律で高校生もそんなバイトはできないはずです。
しかし、そんなバイトをしている女子高生がいました。
彼女の名は、川崎沙希。比企谷八幡と同じクラスの二年F組であり、明け方までバイトに明け暮れるせいで、遅刻の常習犯としてヤンキーのように見られ、コミュ力の化け物である由比ヶ浜結衣にすら「ちょっと近寄りがたい」と言わしめる女子高生です。
彼女にバイトを止めさせたい、と奉仕部に相談を持ちかけたのは、彼女の弟である大志。家族として彼女のことを心配し、どうにかしてバイトを止めて欲しいと彼は言うのでした。
それも当然でしょう。毎日、午前五時頃に帰宅し、学校には遅刻し……そんな生活を続けていれば、いずれ肉体や精神共々やつれてしまう未来が見えます。
……それにしても、『何故彼女はそれほどまでにお金が必要なのでしょうか?』
この疑問こそが、今回の肝であり、そこには家族を思う気持ちが隠れているのでした。
本作の魅力は「良い意味でラノベらしい文章」だと自分は思います。全く隠す気のない比企谷八幡の心の声が垂れ流され(それが苦手という人もいるでしょうが)、数々の小ネタを隙間なく並べたようなテンポ良い会話の数々。
読んでいて、苦手な人がいるというのも理解できますが、その文章に一度慣れてしまえば、この作品でしか見ることのできない雰囲気を楽しむことができます。
するっと読める楽しい物語でした。