※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
裁きの場。
情報
作者:天城ケイ
イラスト:ニノモトニノ
ざっくりあらすじ
学院で過ごし始めて一年が経過しようとしていたある日。クーファはメリダにある進級試験を課す。もし失敗すれば、彼女の血で自らを染める覚悟をして。
感想などなど
まず最初に、状況を確認しましょう。
クーファは「メリダが騎士(もとい貴族)として相応しいか」どうかを判断し、それに満たさなければ殺すという任務を負っています。
貴族であるアンジェル家の娘・メリダは「マナを解放することすらできない ”無能才女”」でしたが、クーファの手によって無理矢理マナを解放。しかし、代々受け継いでいたはずのパラディンではなく、クーファと同一であるサムライの力を得ました。
つまり、クーファは自らの属する団を裏切り、メリダは世界に嘘をつきました。まぁ、メリダは完全に無自覚ですし、彼女が今後生きていくとすれば、これ以外の選択肢はありませんでしたので、メリダを攻めるのはお門違いかと……というのは読者の視点。
世間がこれまでマナ能力の一切を使えなかった彼女に疑いの目を向けてしまうのも当然と言えば当然。それにこれまで蔑んできたメリダが、めっちゃ強くなってたら嫉妬とまでは言わずとも、複雑な感情を抱く人も少なからずいるはずです。元々「メリダは本当の娘ではない」とガヤが騒ぎ立てていたという事情も上乗せされていきます。
そんな悪意と戦うために、これまで頑張ってきました。結果も出しています。しかしまだ足りない。クーファはメリダに試験を課しました。それが今回のお話です。
と試験内容のあらましを説明する前に、物語における一大事件を。
メリダは多くの人の悪意を向けられていたことは上記で説明しました。しかし、噂は所詮噂であって確証ではない。メリダを蹴落とそうとしても、あと一つ足りません。
証拠です。
例えば、メリダの本当の父親が現れよう者なら……という最悪の事態が起こります。上に示した悪意が、証拠という武器を持って膨れ上がるのです。
あぁ、メリダが人望に恵まれていなければ、どうなっていたことやら。
では物語の本筋である試験内容について語りましょう。
超ざっくりに説明すれば「ダンジョン攻略」です。そのダンジョンに当たるのが大迷宮《ビブリアコード》こと大図書館であり、古の書物を求めて亡霊(であってるんだか……)が彷徨っています。本来は二年生以上が受ける高難易度試験であり、一年のメリダが受けるものではありませんが、だからこそクーファはメリダに受けさせ、「彼女は《聖騎士》として恥じない娘」であることを示そうとしている訳です。
まぁ、負ければ逆に敵に突き入る隙を与えるのですが……。
クーファの期待に応えようと必死に食らいつくメリダ。
メリダのために身を粉にして奮闘するクーファ。
メリダを蹴落とそうとする怪しい影。
そんな状況で試験が何事もなく進むはずもなく、事態は学園全体を巻き込んだ大事件と発展します。
本作の魅力は多彩で魅力的な敵や能力でしょう。
今回は道具の一つとして魔法が使える不思議な本が登場します。例えば、物語の主人公の能力を手に入れたりすることができたり、物語の中に閉じ込めたり、などなど。
これまでとは毛色を変えた幻想的でメルヘンチックな世界観で描かれる戦闘シーンは必見です。またイラストも可愛い。赤ずきんエリーゼが個人的に好きです。あとは「秘密の国のアリス」メリダも可愛いし、「人魚姫」サラシャも(以下略)