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魔王様、リトライ!① 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

魔王様、ようこそ

情報

作者:神崎黒音

イラスト:緒方剛志

2019夏アニメ化:第一話第二話第三話第四話第五話第六話第七話

ざっくりあらすじ 

世界を支配した大帝国にて、国々からプレイヤーを集め殺し合いをさせるという ”設定” のGAMEの運営を行っていた大野晶。そのGAMEのサーバーの契約が切れる最後の日、名残惜しそうに眺めていると……GAME内の魔王、九内伯斗となって異世界へと飛ばされていた。

感想などなど

まず本作のジャンルから明確にせねばなるまい。

まず魔王様という時点で異世界転生かと思う人もいるかも知れないが、主人公は死んでいないので転生ではない。

あらすじを見た人はゲーム世界に移動してしまう系か、と思うかも知れない。しかし、主人公である九内伯斗が飛ばされたのはゲーム世界とは全く関係ない異世界である。

つまり、この作品は「ゲーム設定を引き継いだキャラ」が「異世界」に移動した「ファンタジー」だと言えよう。まぁ、端的に言ってしまえばファンタジーである。

そんな本作の面白い点は勘違いが勘違いを生み、物語が展開していく点にある。その勘違いを理解しているのは読者だけであり、「いやいや、違うわ!」と自ら突っ込みを入れて読み進めることとなる。

だからといって先を読みやすい単純な展開という訳ではない。ゲームでありがちな設定や展開が、ファンタジー世界の設定と噛み合って意外な展開を生み出してくれている。そんな本作の感想を見ていこう。

 

あらすじで書いた通り、主人公である大野晶は自作ゲームの魔王・九内伯斗として、異世界に転生することとなる。どうやら異世界の悪魔王とやらに生け贄を捧げ、魔王を復活させたら、九内伯斗が来たという設定らしい。この説明と、生け贄として捧げられそうになっていた少女・アクと出会うのが、作品の冒頭となっている。

この展開、かなり珍しくないだろうか。「異世界転生物」は大抵の場合、その辺りの「何故転生してきたのか」「何故主人公が選ばれたのか」といった点は明かされないまま進展していくが、本作では最初に明示されていた。

また他の異世界転生とは違い、主人公(または所持アイテム)だけにゲームの設定が適用され、ファンタジー世界と兼ね合いを持たせている。

例えば、主人公である魔王にはSPという概念があり(本来、この世界にはSPという概念は存在しない)、強敵を倒すことでSPを集めることが可能だ。また「魔王特有のスキル」と言うべきか「30レベル以下の敵の攻撃全てを無効化」するため(同様、この世界にはレベルという概念はない)、雑魚的からの攻撃の一切が無効化される。

またゲーム設定では「10HP回復」の効果を持つ水は、ただの体に良い水となっている……というようにゲーム設定がファンタジーに落とし込まれている。

そういった兼ね合いの調査を行いながら慎重に、しかし大胆に行動をしていく。

 

異世界で共に旅をするのは、第一巻前半時点で二人。

一人は魔王として復活した時、最初に出会った少女・アク。廃れ、古い風習に縛られた村に生まれ、まともな風呂に浸かったことはない。着ている服はボロボロで、役に立たないと生け贄として捨てられていた。しかし、まともな服を着せれば驚く程に可愛いということは、表紙を開き、イラストを見て貰えば分かるだろう。

二人目は三聖女の末っ子。典型的なツンデレであり、(おそらく)ドM。魔法に関してはかなりの強者であるようだ。まぁ、九内の方が強いのだが。

そんな二人と共に進む道中。どうやら悪魔王が殺され(九内が冒頭で殺しちゃった)、魔王(=九内)が新たに生まれてしまったと世間様を賑わしているようだが、そんなことあまり気にしていないようで、それが勘違いを生んだりするが、その話は置いておこう。

 

分かりやすく楽しい設定と、勘違い系ファンタジーとしてのストーリーの面白さ。無駄にややこしい設定に飽き飽きしたという人にお勧めな作品でした。

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