工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【漫画】鬼滅の刃6 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

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作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 6

ざっくりあらすじ

鬼達に辛勝した炭治郎達であったが、胡蝶しのぶに鬼である禰津子が連れて行かれてしまう。眠らされてしまった炭治郎が目覚めると、最高位の剣士・柱達に囲まれて、今にも死刑判決が言い渡されようとしていた。

感想などなど

鬼を狩る剣士が鬼を助けることは隊律違反となる。まぁ、わざわざ理由を説明する必要もないだろう。長い長い鬼との戦いの歴史において、鬼となった家族を庇った者は数多くいただろう。そしてそのほとんどが、その鬼に喰われたことは想像に難くない。

この隊律はそういったことをなくすための規律であるように思う。

鬼を庇って喰われるよりは、鬼を庇って罰せられる方がまし……考え方は人それぞれだろうが、少なくとも自分の考え方はそうだ。

さて、炭治郎は鬼である妹の禰津子を連れて旅をしている。可愛らしい外見に、人を喰らおうとしない様子だけみれば鬼には見えないが――口に何かくわえてたり、箱に押し込められたりしているけれど――見る人が見れば鬼とは一目で分かるのだろう。

柱である胡蝶しのぶは、禰津子が鬼であるということに瞬時に気がついた。そして一瞬の躊躇いもない強襲。疲れ切って反応すらできない彼らを救ったのは、第一巻でめっちゃ喋ってた人・富岡義勇であった。

彼は炭治郎に逃げるように告げる。しかし、この山には柱だけでなく、数多くの剣士がやって来ていた。逃げられるはずがない。あっさりと捕まって、鬼殺隊の本部に連れて行かれくのであった。

それにしても、富岡さんは他の柱達に嫌われてるんやな……第一巻での喋りは何だったんだ?

 

柱とは、鬼殺隊の中でも最も位の高い九名の剣士のことを指し、血のにじむような努力と、数々の死線をくぐり抜けて十二鬼月を屠ってきた鬼殺隊の最高戦力である。それぞれが使っている呼吸に応じた柱の名前が付けられているようだ。水の呼吸を扱う富岡義勇は水柱というように。

そんな柱達は炭治郎達を囲い、鬼を庇っていた彼らの判決を決めようとしていた。といっても些か一方的に、「派手に首を切るべきだ」「殺して解放すべきだ」とかいろいろと好き勝手に言っている。

さらに鬼である禰津子は刀で何度も貫かれ、炭治郎は強靱な力で押さえつけられている。このままでは判決が下されるまでの過程で死ぬ。

だが、鬼を狩るために鍛錬を積み重ねてきた柱達にとって、鬼を庇うということは理解できない狂人の行動なのだろう。殺すという判決以外は選択肢にないといった様子である。

そんなピンチを救ったのは、これまでシルエットだけ登場していた鬼殺隊の当主・産屋敷耀哉だった。彼が屋形の奥から現れただけで、いきなりひざまずいて頭を垂れる柱達。彼らにとって、当主は絶対であるようだ。

そんな彼のカリスマによって、鬼である禰津子のことを認めさせられた柱達。主からの命令ということもあり、表だっては認めたようにするも、彼らには納得いかないというような表情が浮かんでいる。

炭治郎はこれから禰津子を認めさせなければいけない。これまで以上に過酷な戦いが予見される。

……とその前に、二度目の修行パートだ。漫画だと修行パートは大抵、ダレると思うのだが、炭治郎には修行する姿が良く似合う。弱音一つ吐かずに、真面目に修行に打ち込む姿は、女の尻を追っかけるしか興味ないどっかの誰かよりは好印象である。

この修行が終わってからは、死んでもおかしくない戦いが幕開けることを考えると、いつまでもこの平和な修行パートが続いて欲しいと思ってしまうのは人情だろうか。

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【漫画】嘘喰い6 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

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作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 6

ざっくりあらすじ

ハングマンで佐田国に勝利した斑目貘だったが、その裏ではテロリストがミサイルを撃とうと画策していた。それを止めるために動くマルコとレオの前に、最凶の元立会人・伽羅が立ち塞がり、さらに貘たちの前にはお屋形様まで現れて……

感想などなど

全盲だったが視覚再建手術により、カメラ越しの視覚を得て、部屋に設置された監視カメラを通して手札をのぞき見るという普通は絶対に気付かないイカサマをしていた佐田国。

ただ相手が悪かった。

佐田国の行動の違和感から「監視カメラ越しにしか見ることができないのでは?」と考え、複数台設置されているカメラをどのような周期で確認しているのか調査しつつゲームを進め、周期を割り出した後は、偶然にも壊れてしまったカメラによって作り出された暗闇の時間や、カメラごとの死角を駆使して佐田国のイカサマを逆手に取った勝利を収めてしまった。

化物。そもそも気付くこと自体がおかしいと思うのだが、それを逆手に取って勝利を収めてしまうことがもっとおかしい。種明かしでも徹底して運の要素を排除した作戦の数々は目を見張るものがある。

こうしてハングマン勝負は幕を閉じた……かに見えた。

その裏ではミサイル発射というテロ行為が行われようとしており、それを巡っての暴力のバトルが繰り広げられていた。マルコとカラカルの両名が向かった先にあったのは、ミサイル発射砲台でそれを撃たんとする武器商人カール・ベルモンドと、立会人・伽羅。

この伽羅という男があまりに厄介過ぎた。

殺気を察知して銃弾を避けるという芸当を当たり前にやってのけ、マルコを全く苦もなく、赤子の手でも捻るかのように倒して見せた。戦闘において知略と技術で戦うタイプと思われるカラカルの策略も看破し、力でこちらもねじ伏せていく。

戦闘において必要な力の全てが圧倒的。襲撃を受けながらも余裕の表情であるカールの安心感は、この男がいるからこそであろう。

 

そんな戦いが起きている最中、貘たちの前にお屋形様が現れる。何の用事かと思えば、一連のテロ騒動を裏で操っていたのは彼であることが明かされる。ミサイルが撃ち込まれることによる株の値動きにより儲けようというらしい。

国を変えるためにテロという行為に打って出た死すら恐れぬ佐田国。そんな彼の行動も意のままに操って利用したのだ。

まぁ、過程がどうであれ、このまま行けば佐田国の念願であるテロ行為は成功する。

ハングマンで死ぬ運命であったとしても、彼の同士達が何とかしてくれる。意思はそう簡単には途絶えない。立会人でありながら佐田国のイカサマに加担していた目蒲鬼郎までも、彼の意思に答えるように妃古壱に「號奪戦」を挑み時間稼ぎをする。

號奪戦というのは立会人が、自身より上の號を持っている立会人に戦いを挑み、勝てばその號を引き継ぐというもの。

つまりは暴力と暴力のぶつかり合い、戦いである。こちらも目が離せない。

 

第六巻を通して暴力が描かれる。力が強い方が勝つというシンプルな戦いでありながら、先の読めない展開が続き、「ミサイルは撃たれるのか?」「佐田国はこのまま死ぬのか?」「お屋形様の目的は?」「號奪戦の行方は?」などと気になる点ばかり浮かんできて一気に回収されていく流れがたまらない。

とても密度の濃い第六巻であった。

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【漫画】ウマ娘シンデレラグレイ3 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

オグリキャップの物語

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作者:久住太陽

試し読み:ウマ娘 シンデレラグレイ 3

ざっくりあらすじ

カサマツから中央にやって来たオグリキャップは、日本ダービーを目標に掲げる……が、クラシック登録を逃したために出走すらできないことが分かる。皇帝シンボリルドルフを頼り断られ、自身の脚で常識もルールも覆すために中央で戦っていくことを誓った。

感想などなど

カサマツでのラストラン。中央行きを賭けたゴールドジュニアとのレースは、オグリキャップの勝利で終わった。中央行きを惜しむ声が叫ばれる中――号泣するノルンエース好きやで)、中央へ行くことを宣言したオグリキャップの活躍が、この第三巻から描かれていく。

さて、ここで少しばかり競馬のクラシック制度というものについて説明したい。といっても漫画の説明と、Wikipedia先生の御指導を組み合わせた付け焼き刃であることは念頭に置いて欲しい。

クラシックレースというのは、簡単に言えば伝統と格式のあるレースのことを指す。その中でも特に『事前のクラシック登録を済ませた』『三歳馬限定』で出走が認められるレース……皐月賞、日本ダービー、菊花賞のことはクラシック三冠レースと呼ばれる。

『三歳馬限定』ということもあり、一生に一度しか参加できない。現実のウマの三歳が、ウマ娘世界の何歳になるのか良く分からないが(ゲームの方してるともっと混乱する)。

問題は『事前のクラシック登録を済ませた』という条件である。漫画内では書類審査というように説明されており、クラシックレースの格式の高さを表している。おそらく地方のウマ娘程度がこの登録をしようとしても、できないようになっているのだろう。中央にウマ娘しか出られない節がある。それらルールを決めるURAの役員もそんなことを言っていた。

オグリキャップはそのクラシック登録を逃したのだ。それにより東海ダービーの代わりに日本ダービーの1着を北原に送ろうというオグリキャップの目標は、抱いたその瞬間に砕かれたことになる。

だが、彼女は諦めない。生徒会長にして絶対と謳われた皇帝シンボリルドルフのもとに赴き、日本ダービーを走らせて欲しいと直談判した。それに対するルドルフの答えは非常だ。

「中央を無礼るなよ」

とプリティーとは程遠い顔で告げる。それに対するオグリの答えは、

「ならば実力で覆す」

「常識も……ルールも! この脚で!」

そこからのオグリの活躍と実力は圧巻の一言である。

 

中央にもともといたエリートウマ娘達にとって、10勝2着2回という超好成績も所詮はカサマツという田舎で遊んでいたにすぎない灰被り姫だ。この中央では地方から来て、大した成績を出せぬまま去って行くウマ娘も珍しくない。そのためかオグリへの当たりもかなり強いものとなっている。

「田舎の砂遊びなんざノーカンだろ」

「尻尾まいて田舎に帰れ」

等々。それに対するオグリの返しは、

「あの砂はダートといって砂遊びをする為のものじゃないんだ」

そんなオグリの天然により砕かれていくいびりの数々。最初はオグリを下に見ていたような面々も、彼女の実力を認めていく流れは気持ちいい。その流れはウマ娘だけでなく、レースを見ていた観客にまで広がっていく。

常識もルールも変えていくといった宣言が、本当になっていく。そういえばこれ史実だった、とふと思い出してしまうようなドラマの連続であった。

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【漫画】ジョジョリオン15 感想

【前:第十四巻】【第一巻】【次:第十六巻
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※ネタバレをしないように書いています。

「呪い」を解く物語

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作者:荒木飛呂彦

出版:集英社

試し読み:ジョジョの奇妙な冒険 第8部 モノクロ版 15

ざっくりあらすじ

ホリーの症状が悪化していることを知った定助は、ロカカカの実の入手を急ぐ。そのため震災の影響で場所が分からなくなった接ぎ木して育てたロカカカの枝を捜すことに。

感想などなど

定助はこれまで自身の正体を知るために戦って来た。これまで良く分からない岩人間に襲われ勝ってきたが、そのどれも「本当に正体に近づいているのか?」という不安が拭いきれなかったが、田最環との戦いはその不安に終止符を打ったと言っていいだろう。

それにより定助の目的がはっきりとした。

かつては吉良の母親・ホリーのことを救ために、ロカカカの枝を盗み接ぎ木していた。命を賭けた吉良と仗世文の思いを受け継いで、今度は定助が達成しなければいけない。

ということで震災により場所が分からなくなった接ぎ木したロカカカの枝を捜し始める……が、これまで岩人間が探し続けて見つけられなかった枝である。定助がすぐさま見つけられるとは思えない。

そんな定助に「常敏が岩人間と繋がっていたかもしれない」という話を聞いた憲助は、枝を探すための助っ人として、企業秘密とまでされる程に優秀な腕を持ち、信用のおける『植物鑑定人』を紹介してくれることとなった。

「決して常敏に感づかれるなよ」

「確かにあの枝は定助……お前のものだ」

「等価交換には……正しい道が必要だ」

最初は黒幕とか疑ってすいませんでした憲助さん。あんたは人格者だわ。

 

とはいっても常敏にすぐに感づかれてしまった。しかし、常敏が定助とやり合うのは分が悪い。彼はドミロテ(泥駒政次)というロカカカ販売には関わってこなかった岩人間に、人と人を等価交換させてしまう新しいロカカカの実を餌にして協力を取り付けた。

このドミロテの能力があまりにヤバい。絵面的にはゾンビホラーである。

スタンド名は「ブルー・ハワイ」、能力は「その体液に触れた者は、何があろうとも対象に向かって直線で突っ込んでいく」というもの。この『何があろうとも』というのがポイントだ。

始まりはドミロテの歯を渡されて、定助に渡しに来た少年から始まった。壁にぶつかろうとも、走る車にぶつかろうとも、血みどろになった少年は定助に向かって突っ込んできた。その血に触れた婆さんが、次は定助に向かって突っ込んでくる。壁を乗り越え、顔の皮膚が剥がれようとも突っ込んできた。その後も、次々に体液に触れた者達を操って、轢かれようがどうしようが追っかけてくる。

その様子はさながら痛みを感じず、猪突猛進のゾンビを想像させる。狙いは定助一人であるはずなのに、被害は街全体にまで広がっていく。きっとどこまで逃げても意味がないだろう。

定助としては本体を叩きたいが、如何せん敵の正体も場所も分からない。そこで久々の登場である康穂ちゃん。彼女の活躍が楽しみである。

やはり目的がはっきりしてからが面白い。ここからがジョジョリオンの始まりではないだろうか。

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【漫画】鬼滅の刃5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻
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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

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作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 5

ざっくりあらすじ

十二鬼月の鬼も現れ、柱の二人も駆けつけて、那田蜘蛛山での戦いも終盤戦に突入。炭治郎ら三人は生き残れるのか?

感想などなど

数多くの鬼殺隊員が乗り込んで、そして死体の山が積み上げられていった那田蜘蛛山。蜘蛛の糸を身体に付けて操る鬼、猛毒を持つ蜘蛛をけしかける蜘蛛みたいな鬼、……まだ新人に過ぎない炭治郎達には厳しい敵ばかりであるように思うが、ギリギリの戦いを制してきた。

そんな炭治郎と伊之助の前に現れたのは、巨大な腕を振り回してくる巨大な鬼。ただ力が強いだけならまだしも、刃が通らないほど固い。これでは倒す手段がないではないか、どうやって倒す? と考えている暇もなく、巨木でぶっとばされてしまう炭治郎。一般人ならこれで死んでいるが、彼もこれまで無駄に鍛錬を積んできた訳ではない。主人公補正もあり、彼は新たな鬼の目の前に落下してきたのであった。

これが第五巻の冒頭部分までのあらすじといったところだろうか。

ただでさえ首を斬らないと死なない鬼との戦闘は、無能力者が能力者に身体能力だけで挑むようなドキドキ感があると個人的に思う。まぁ、伊之助の驚異的な野生の勘とか、炭治郎の人外じみた嗅覚とかを能力に数えられる気もしなくもないが。

この第五巻で炭治郎が戦うことになる鬼も、例に違わず血鬼術を操り、炭治郎を苦しめてくる。

彼が操る術は糸を張り巡らせて、目に見えない斬撃のように切り刻んでくるというもの。他漫画のキャラクターを例えに出すとすれば、HELLSINGのウォルターや、ONEPIECEのイトイトの実の能力者・ドフラミンゴみたいな糸使いである。

しかし、見た目だけならば炭治郎を吹っ飛ばした父と呼ばれていた鬼の方が強そう。

その考えが甘かった……。

 

有象無象を除いた強い鬼には無惨によって十二鬼月という位付けがなされており、該当する位の数字が眼球に刻まれる。数字が一に近ければ近いほど強いという分かりやすい設定がなされている。

炭治郎と伊之助は巨大で力が強く、しかも簡単には切れないほど固い父さん鬼を、十二鬼月の鬼だと考えた。だがしかし、それは炭治郎達が弱すぎるが故にしてしまった勘違いだった。

鬼の世界において、父さん鬼は大して強くないのだ。

遅れてやってきた柱・冨岡義勇にあっさりと倒される父さん鬼。柱からしてみれば、そいつは十二鬼月には遠く及ばない雑魚。そして柱と主人公一行の間にある実力差をも、同時に教えてくれる。

もしかしてこの山には十二鬼月はいないのか?

と思った矢先に、眼球の数字を見せつけてくる鬼・累。柱はまだ遠い。炭治郎は妹の禰津子を庇いつつ、この累を狩らなければいけない。そして彼の十二鬼月としての実力がまざまざと見せつけられることとなる。

まず技である糸による攻撃が早くて固くて避けられない。その固さはあっさりと刀が折れてしまったことから分かっていただけるはずだ。糸ですら切れないのに、首が切れるはずもなかろう。しかも刀は折れている。

そんな累は予想外の言葉を吐く。「禰津子が欲しい」「家族にする」と。

禰津子は鬼と化してもなお炭治郎のことを兄として慕い、これまでピンチの時は共に戦ってくれた。そんな家族愛の素晴らしさに心を打たれ、その愛を自分のものにしたいと考えたようだ。

家族という血のつながりは、簡単にすげ替えられるようなものではない。長い時間をかけて育まれていくべきものだ。だが、この累はそのことを分かっていない。恐怖で縛り付け、言うことを聞く従順な関係性こそが家族愛だと彼は語った。

鬼の性格は、記憶がないはずの人だった頃のものに引っ張られる。彼は一体、人だった頃にどんな経験をしたのだろうか。

 

そういえば当たり前のように『柱』という言葉を使ってしまった。

第五巻、那田蜘蛛山での戦いが終わった後に初出であり、鬼殺隊における最強の実力者達を指した名称である。その実力の高さというものは、この那田蜘蛛山編で見せつけられたことだろう。

一癖も二癖もある面々だが、今後の戦いにおいて彼らが重要な役割を持つことは想像するまでもない。

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻
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【漫画】嘘喰い5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻
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※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

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作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 5

ざっくりあらすじ

斑目貘と佐田国一輝による命を賭けた首つり遊戯・ハングマン。二人が選んだギャンブルはババ抜き。佐田国の強気な引きに、追い込まれていく斑目貘であったが……

感想などなど

大まかなゲームのルール説明については、第四巻にて行われていた。が、改めてここで記させていただこう。

まず首つり遊戯・ハングマンについて。

もともとは紙と鉛筆で行うワードゲームで、出題者が密かに思った単語の構成を推理し言い当てるというものだ。回答者が思った文字を言っていき、それが失敗する度に線を一本ずつ追加して絵を描いていく。想定の回数に達した時、首を吊られた絵が完成してゲームオーバーという視覚的に分かりやすいゲームである。

当然だが、この命を賭けた勝負において絵を描いて終わりというはずがない。これら一連のルールを実物で行うのだ。

つまりゲームで負ければ、首吊り装置が一つ、また一つと完成されていくのだ。そしてその装置が完成された時が死ぬときである。実に分かりやすい。

そんな死亡遊戯のカウントを決めるゲームは、みんな一度はしたことがあるであろうババ抜きである。

ババ抜きの説明はいらないかもしれないが、改めて説明する(少しばかりカードの種類が変わるだけで中身は変わらない)。

カードは1から10までのカード2組と、ババ抜きでいうところのババが一枚の計21枚で行われる。シャッフルしたカードを互いに持ち、相手のカードを1枚ずつ引いていって、ペアのカードを捨てる。最後にババを持っていた方が負け。

特殊な点として、このババに代わるカードが五種類あることがあげられる。それぞれ1から5の数字が割り振られ、負けた方――つまりババを最後まで持っていた方は、このババに描かれた数字の分だけ、首吊り装置の行程が進んでいく。

肝心の首吊り装置完成までの行程は11回。ゲームオーバーまで最短で三回のゲームをすることとなる。

……あぁ、重要なルールを説明し忘れていた。

『発覚しないイカサマについては、賭郎は関知しない』

 

ゲームを天命に任せるようなギャンブラーは二流である。一流のギャンブラーは運の要素を限りなく排除して絶対の勝利を掴む。そのために斑目貘も、佐田国一輝も、互いにイカサマをしている。

それがこのゲームの醍醐味であろう。ババ抜きというシンプルなゲーム。カードを準備していたのは賭郎であるため、第三巻で梶が嵌められた時のように、カードに仕掛けをされたというようなことは考えられない。そのような状況下で、いかにしてイカサマを仕組むか。

その答えは第四巻のゲームが開始する前から、はっきりと描かれている。今となって読み返すとあからさまというか、後になって意味が分かるシーンやコマ割りの多さに驚かされる。

そして同時に思う。気付くわけがないだろ、と。

それほどに佐国田一輝の仕掛けたイカサマは奇想天外だ。チートを使ってゲームに勝とうとしているのと同じだ。負ける方が難しいと言って良いだろう。なにせ『発覚しないイカサマについては、賭郎は関知しない』のだから。

それほどに荒唐無稽なトリックに説得力があるのは、長く丁寧に仕込まれた伏線の多さ、違和感が解消されていく快感にある。そんな気付くはずもないネタにたった一人気づき、むしろ逆に利用した嘘喰い ”斑目貘” はあまりに恐ろしい。

何度も書くが、佐田国一輝の仕掛けたイカサマは負ける方が難しい。途中で佐田国一輝の内心も描かれるが、「ミスはしなかったはずだ」「そんなはずはない」と嘘喰いの言動・状況を冷静に鑑みている。

第四巻含め、二周した自分も断言する。彼はミスをしていない。

ただ相手が悪かった。ミスと思わないような行動の一つ一つを、丁寧に読み取って行くと辿り付く想定しようがない答えに、斑目貘が辿り付いてしまったのだ。彼の天命は結局ここまでだったのかもしれない。

そんな賭け事勝負の裏ではテロリスト集団が慌ただしく動いているし、目が離せない展開が続く話であった。

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻
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【漫画】HELLSING(1) 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻】

※ネタバレをしないように書いています。

化物を狩る

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作者:平野耕太

試し読み:HELLSING (1)

ざっくりあらすじ

「王立国教騎士団」通称「HELLSING機関」は、反キリストの化物共を葬り去るために組織された特務機関である。そこで作り上げられた最高傑作アーカードは、今日もHELLSING卿の指示に従い化物を退治していた。

感想などなど

人知を越えた力を持つ化物を退治するためには、少なくともそれと同等の力を得なければいけない。そこがスタートラインであり、そこが最も難しい点であろう。

例えば。

一話でHELLSING機関が退治する化け物は吸血鬼だ。人の血を啜り、特定の武具でしかダメージを与えることができない不死身の存在。たった一人で村一つを壊滅させてしまった ”そいつ” を狩ることが、機関に課せられた仕事であった。

そんな敵に対して、機関が差し向けたゴミ処理係はたった一人。

最高傑作アーカードである。

自身が無敵だと勘違いした吸血鬼は、その男に迷わず攻撃を仕掛ける。自らが作り出したグールをけしかけ、銃で滅多撃ち。それを受けたアーカードは顔に身体に穴が空き、四肢がもぎれた。死んだ、吸血鬼はそう思う。

だが、アーカードは起き上がって不敵に笑う。

「吸血鬼は銃なんかじゃ死なん」

アーカードはHELLSINGが作り出した対化物の化物・吸血鬼だったのだ。

 

そんなアーカードは吸血鬼――しかもかなり強い――でありながら、「王立国教騎士団」に所属して化物殺しを請け負っている。ヘルシングの指示に従い、各地を駆け巡って化物を殺して回っていた。

第一話にて血を吸うことで吸血鬼に変えた婦警も、いつしか仲間に加わって共に化物退治に勤しむ日々。いちいち格好いいシーンと台詞と共に薙ぎ倒していくのは、読んでいて快感に思うほどだ。

その絶対的な力の前に、同じく化物を狩るために化物以上の力を得た『人間』が彼らの前に現れた。

そいつの名は「聖堂騎士」アレクサンド・アンデルセン神父。

法王庁の特務局第十三課イスカリオテ機関に所属し、異教民共と化物は皆殺しにしても構わないという教えに則り、アーカードに牙を向いた。剣を両手に携えて、銃を持った吸血鬼に飛びかかり圧倒していく様は、これまでの敵とは比べものにならない強敵であるということを教えてくれる。

「チリはチリに ちりにすぎないおまえらはちりに還れ」

アーメンと言いながら殺しに来る様は人は思えぬ。だが奴は人間なのだ。銃弾を受けても立ち上がり、吸血鬼に刃を突き立て首をもぎ取る様は圧巻である。恐ろしい……恐ろしい……だがアーカードもまた化物であり、それらの攻撃を受けても笑っていられるような余裕があった。

狂気とお洒落さが両立したようなシーンとコマ割りの連続に、読む手は止まらない。そういう漫画であった。

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻】

【漫画】ジョジョリオン14 感想

【前:第十三巻】【第一巻】【次:第十五巻
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※ネタバレをしないように書いています。

「呪い」を解く物語

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作者:荒木飛呂彦

出版:集英社

試し読み:ジョジョの奇妙な冒険 第8部 モノクロ版 14

ざっくりあらすじ

定助の正体が「死んだ吉良と融合した仗世文」だと突き止めた田最環は、定助に対する攻撃を開始。しかし、騙されていたことに気付いた鳩も、田最に対する攻撃を開始した。

感想などなど

田最環は岩人間陣営の悪役として有能であった。接ぎ木というバレようがないと思われた手段で、ロカカカの実が盗まれたことを見抜き、長い時間をかけて吉良と仗世文が犯人であるということを突き止めて見せた。持っているスタンドは攻守ともにバランス良い能力で、しっかりと隙を突いて家族もろとも追い詰めた手腕は見事である。

それに鳩ちゃんがいくらアホとは言え、騙してきたというのは悪役の姿としては立派なものだ。

まぁ、彼はそうして騙してきて、バカにし続けていた鳩に串刺しにされる訳だが。

第十三巻のラスト、額を思い切り突き刺されたシーンは衝撃的であった。それで死なないのは岩人間だからこそ、普通の人なら死んでいる。その後、伸ばしたヒールで壁を上っていく辺り、彼女の身体能力の高さも伺える。モデルだから身体を鍛えたりしてるのかも。

ちなみに東方鳩のスタンドは『ウォーキング・ハート』で、能力は『硬質化したかかとを伸ばす。靴を履いてればそのヒールごと伸びる。長さはおよそ四メートルくらい伸びる』というもの。もしも自分にそのスタンドが出てきたら外れだと思うことだろう。戦闘に特化している訳でもなく、便利な訳でもなく……そんな力を使って、涙を流しながら愛した男・田最環を殺す姿は、中々に来るものがある。

こうして田最環との因縁は幕を閉じた。岩人間も全員倒したし、これで全てが一件落着。

 

するはずがない。ジョジョリオンはまだまだ続いていく。

話は少し横道に逸れ(後で本筋に絡んで来るかなぁ……)東方常秀がミラグロマンという都市伝説的な現象に巻き込まれてていく、二話ほどで完結するエピソードが挟まる。

まず最初に皆さんと少し認識合わせをさせて欲しい。東方常秀は屑……ですよね。

康穂と脳内で付きあったことにしていたり、アイドルのグッズを買うために親に金をせがんだり、我が儘放題のまま成長している。ジョジョシリーズの味方は、大抵の場合、黄金の精神を持っている者だし、巻を進むにつれて成長していくものだが、彼には適用されないらしい。

そんな彼は屑故に厄介な存在・ミラグロマンに絡まれていく。

ミラグロマンというのは、紙幣の形になって個人に取り憑いていく独立型のスタンドである。スタンドとは言っているが、その紙幣は実際に使うことができるという変わった形のスタンドだ。

このスタンドにはルールがある。

ミラグロマンの紙幣を使った者は、金を減らすことができずどんどん増えていく。作中において常秀は、拾った財布から五十万を盗み、それを使って豪遊しようとする。だが使っても使っても金が減らず、逆に金が増えていき百万円から二百万円、さらに二千万というように増えていくのだ。

使うという行為のみならず、紙幣を燃やしても増えていく喜ばしい地獄絵図だ。

この経験を経て、彼も人として成長してくれることを願う。

【前:第十三巻】【第一巻】【次:第十五巻
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【漫画】鬼滅の刃4 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻
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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

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作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 4

ざっくりあらすじ

鼓を操る鬼の屋敷から出た炭治郎は、嘴平伊之助と我妻善逸らと共に、緊急の指令で那田蜘蛛山という不気味な山へと向かった。

感想などなど

鼓を叩く鬼の首を斬り、血も無事に回収して一件落着となった第三巻。そんなのも束の間、外に出た炭次郎の前には血だらけの善逸と、イノシシ頭の男・伊之助が立っていたのだから驚きである。どうやら伊之助が善逸をボコボコにしていたようだ。

鬼殺隊の隊服を身に……つけてなかったけれども、日倫刀を持っているのだからきっと、彼も鬼殺隊であろう。そんな彼が何故に善逸を攻撃していたのか? その経緯は、炭次郎が大切にしている妹・禰豆子(鬼)を伊之助が殺そうとしているのに対し、善逸がそれを守ったことによるようだ。

普段は女好きでどうしようもないヘタレかもしれないが、(眠れば)強いし、炭治郎が大切にしているものを守ろうとし、どんなにボコボコにされようとも鬼殺隊同士の争いは御法度という規則を守り続ける彼の姿は格好いいと言って良いかもしれない。

そんな最悪な出だしではあるが、彼ら三人での鬼狩りの日々が幕開けようとしていた。

 

休みなんてないものと思われていた鬼殺隊の仕事ではあったが、流石に骨が何本も折れている彼らにこれ以上無理強いはさせられないという優しさかは知らないが、しばしの療養期間が与えられることとなった。

その間に禰豆子のことは二人に説明し、ゆっくりと身体を休める。

そこで描かれていくのは、伊之助が人に近づいていく過程だと思う。彼は元々、イノシシに育てられてきた。それにより培われてきた野生児であるが故の独特な戦闘センス、炭治郎を翻弄した驚異的な身体の柔らかさ……それらは鬼と戦っていく上でかなりの武器となるであろう。

しかし、彼には社会性というものが恐ろしく欠如していた。

鬼のいた屋敷で少女を踏みつけて足場にしたことを悪びれる様子もなく、むしろ刀を向けてきた。炭治郎との対話よりも争いを好む血気盛んさも、一緒に行動していく上では不安点でしかない。死体を埋めて弔うという行為に意味を見出せないのは、これまで人が当たり前に培ってきた死生観とは無縁の生活を送ってきたことを意味する。

彼は当たり前のように仲間として加わり、次の戦場である那田蜘蛛山へと向かうこととなっているが、一人だけで突っ走っていく姿が容易に想像できた。

だが、動機がどうであれ、炭治郎と共に鬼と戦っていく上で心強い仲間となっていく。それが当たり前に自然と描かれていき、それを凄いと思うのは自分だけだろうか。

 

鬼は元人であるが、人を殺すということに躊躇も躊躇いも同情も期待してはいけない。彼らにとって鬼は捕食対象であり、強くなるために躍起になってこちらを狙ってくる。また、それぞれ強い鬼には血鬼術と呼ばれる独自の技を使ってくるのが厄介だ。

今回の場合、那田蜘蛛山という名前に相応しく、蜘蛛をちなんだような技が振るわれ、炭治郎達を苦しめてくる。

例えば。

炭治郎と伊之助は蜘蛛を操り糸を付けて操ることができる敵と遭遇した。事前にこの山に入って捜索していた鬼殺隊のメンバーは、そのほとんどが糸を付けられ操られており、炭治郎と伊之助を強襲してきた。

生きたまま操られている者もおり、その絵面はかなりエグい。腕が不自然な方向に曲がろうとも、痛みで喚こうとも、剣を持って襲ってくる様はゾンビを彷彿とさせる。厄介なことに操っている本体の鬼は遠距離にいるらしく、しかも炭治郎にはあまりにも刺激が強すぎる悪臭が風に乗って運ばれてきていることで、匂いで鬼の居場所を突き止めることもできない。

そこで活躍するのが、野生児の伊之助。

彼が力任せに突っ込んで行こうとするのを、持ち前の長男力(?)で無意識に操って協力して戦うように持っていく。二人タッグでの戦闘はシナジーが大きく、とっさの機転で互いに互いを補っていく姿は、長い時間を共に過ごしたような錯覚を引き起こさせる。

一方、山に入りたくないとギリギリまで駄々をこねて、結局置いて行かれた善逸は、まんまでっかい蜘蛛の姿をした鬼と、単機で戦闘に望んだ。炭治郎だと死にかけない異臭を身体から放ち、周囲に人の顔を持った大きめな蜘蛛を侍らせている。

こいつは一撃必殺毒を使ってくる。置いて行かれたこと、炭治郎が禰豆子を背負ったまま山に突っ込んだことに気付いて、泣きわめきながら山へと入っていく彼は、大した警戒もできぬまま毒を喰らい、手が腫れ上がり、髪の毛は抜け、徐々に身体が動かしにくくなっていく。

このまま死ぬのか? と思った矢先、彼の意識は失われた。そこに至るまでの過程はかっこいいとは程遠いかもしれないが、彼が本気(意識なし)状態になってからの戦闘は男の浪漫である強力な一撃技が繰り出される。

楽しいバトルが目白押しの第四巻であった。

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