工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【漫画】ディーふらぐ!1 感想

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作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

ハイテンションラブコメギャグ

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作者:春野友矢

試し読み:ディーふらぐ! 1

ざっくりあらすじ

ぽっと出の不良として学内でも有名(?)だった風間堅次は、不良としての活動の一環で文化部「ゲーム制作部」に足を踏み入れた。しかし、そこには部室内で花火をしてうっかり壁を燃やしてしまった女子高生がいて……

感想などなど

この作品のあらすじを説明することはとても難しい。主人公である風間は、風間一派と呼ばれる不良グループ(?)のリーダーとして、学園での頂点を目指している……らしい。といってもちゃんと毎日学校に通っているし、不良とした周囲に名前と顔を覚えられていないし、色々と突っ込み所が多すぎる。

まぁ、それは置いておこう。

そんな不良のような行為はしていないが不良である彼も、たまには不良らしく文化部のゲームとか色々を強奪してやろうと仲間にそそのかされる形で文化部「ゲーム制作部」へと足を踏み入れた。

何度も言うが彼は不良である。つまりは素行がよろしくなかったり、非人道的な行動を取るような輩のことを指す。

そんな彼以上に悪い輩が、文化部の部室の中にはいたのである。後々彼女達は、この学校内での(名の知れた)裏ボスであったり、一年の中で頭角を現したヤベー奴であったり、生徒会長として権力の限りを尽くす暴君だったりするのだ。

 

そんな突っ込み所満載な彼女達とラブコメ展開を起こしたり、振り回されていく。言動のほぼ全てがボケという狂気じみた可愛らしい女子高生達に、激しい突っ込みをしていくハイテンションなギャグと、巻を進むにつれて属性が様々追加されていくキャラクターの魅力で構成されている。

そんなヤベー奴の一角にして、ゲーム制作部の部長である芝崎芦花。火属性を自称し、女子高生とは思えない小さな容姿を用いて、萌え攻撃をしかけてくる(可愛い)。そんな可愛らしさの裏には、人間離れした身体能力と、人にトラウマを植え付ける闇の袋攻撃が、この学校の裏ボスに君臨する所以となっているようだ。

学園の裏ボス・芝崎芦花の幼馴染みにして学校の生徒会長・烏山千歳は土属性。戦闘時にはわざわざ砂場へと赴き砂の城を作成、拳に土を付けてから戦うという独特なスタイルを構築している。それに対する「無属性だろ!」という風間の突っ込みが好きだ。

そんな裏ボスと生徒会長がいるゲーム制作部の部員・水上桜。一年生。名は体を表すというが、彼女は水属性である。戦闘時は水を入れたペットボトルを持ち、地面で溺れさせてくる。ある意味、一番えげつない。

そんな一癖も二癖もある人しかいないゲーム制作部の部室にて、いつも眠っている雷属性・大沢南。スタンガンを常に持ち歩いている危険人物だが、基本眠っているので一番安全かもしれない。 

ゲーム部以外の面々もキャラが濃すぎる。本当のゲーム制作部の部長・高尾さんは、胸がすんごいし、芦花制作の「勇者と魔王ごっこ」という意味不明なゲームを楽しそうに遊ぶモブに至るまでもが変である。この世界における普通が変なのかもしれない……と思っていたら風間が突っ込んでくれるので、やはり普通ではないのだろう。

そんな彼・彼女らは行動の一つ一つには突っ込み所しかない。風間の長文突っ込みがその度に発生する。不良のくせに律儀でキレの良い突っ込みに、読者はいつの間にか嵌まってしまうのだ。

 

実は本作アニメ化されている。ブログ主もしっかりと視聴済みである(ちなみにこの記事を書いている段階で、十五巻まで購入し既読済みである)。芦花の萌え攻撃に声が付いていたりするだけでも嬉しいし、キャラは可愛い。

だが、どうにも風間の長文突っ込みはアニメ映えしないようだ。少しばかり冗長に感じてしまった。

この作品は漫画でこそ映えると思う。何だかんだでアイラブの巻末ギャグ漫画として十巻以上続いている作品だ。面白さはこのブログでも保障しよう。妙な安定感のある作品であった。

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【漫画】少女終末旅行① 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

絶望と仲良く

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作者:つくみず

試し読み:少女終末旅行 1巻

ざっくりあらすじ

文明が崩壊してしまった世界で、ふたりぼっちになってしまったチトとユーリ。愛車ケッテンクラートに乗って、廃墟を当てなく彷徨う彼女達の日常。

感想などなど

「星空」

現代日本において、夜の街は街灯で照らされて眩しいと感じるくらい明るい。現代の日本人は本当の意味での暗闇というものを、実は見たことがないのかもしれない。

この作品で描かれる世界は、何らかの理由で人類がいなくなってしまい、かつての人が住んでいた痕跡ばかり残る廃れた終末の世界となっている。たった二人残されてしまったチトとユーリは、ケッテンクラートに乗って廃墟の中を進んでいく。

今回、二人が迷い込んでしまったのは巨大な建造物の中。陽の光が入ってこず、迷宮のような場所を当てもなく時間感覚も狂わされながら進んでいく。我々であれば恐怖で狂ってしまいそうな環境であっても、ゆったりとした精神を保っていられるのは、二人で一緒にいられるからだろうか。

長い長い探索の果てに、ユーリの機転(?)により脱出を果たした二人の目の前に広がるは星空。廃墟と星空の一枚絵が素晴らしい。

「知らなかったね 夜の空がこんなに明るいなんて」とユーリ。

「ずっと暗い穴の中にいたからね 光に敏感になってるんだよ」とチト。

絶望的な世界だが、二人のゆったりとした雰囲気と会話に癒やされる……そんな不思議な第一話であった。

 

「戦争」

この世界で何が起こったのか、彼女達は何も語ってくれない。きっとどうでもいいのだろうし、詳しくは知らないのだろう。

だが、至る所に転がっている戦闘機の残骸や、その中にある弾丸やレーションや爆弾といった類いが、この場所で起こったことを物語っている。それらを漁り食料を集め、銃を撃つ練習をするのがチトとユーリの日常である。

チョコ味のレーションを、「チョコが何なのか知らんけど」と言いながら美味しいと食べる。ちょっとした喧嘩や戯れに銃が持ち出される彼女達にとって、戦争で多くの命を奪った兵器は身を守るための道具であり、レーションは命を繋ぐ必需品なのだ。

 

「風呂」

今となっては当たり前のように入ることができる風呂だが、大量の水しかもお湯を消費することは、とてつもない贅沢なことだということを理解しなくてはいけない。終末世界においては、水だって重要なのだ。

天井に穴が空いた元発電所の廃墟にて、降りしきる雪を背景にして、偶然にも手に入れた大量のお湯を満喫するのは最高だろう。

「ごくらくごくらく……」と浸かりながら言うのは、いつの世も変わらないのかもしれない。極楽はあの世を意味する言葉らしいが。

 

「日記」

文字という発明は偉大だ。お陰で昔の出来事が記録されて現代まで残っている。人類の歴史は文字によって紡がれたものだと言っても過言ではない。しかし、そんな偉大な文字も読める者がいなくなっては、ただのゴミと化してしまう。

そんな文字の価値というものを理解し、自分達の歩みを日記という形で記録している者がいた。チトである。だがそのことの凄さをどうにも理解できない者もいた。ユーリである。

ユーリにとってチトが書く日記は、何か知らないけど彼女が大切にしているものという認識でしかない。まぁ、日記は嵩張るし、役に立つかと言われれば難しいところだろう。

それでも人それぞれには、他人には大事に見えなくても大事なものがあるはずだ。それが二人にとっての共通認識になってくれれば幸いだ。

 

「洗濯」

風呂に続いて洗濯も、大量の水を消費する。だが服を清潔に保つということは、健康に生きるという上での基礎中の基礎。当たり前のように社会人がこなしているが、洗濯機という三種の神器の一つがあるからこそ成し遂げられている。

終末世界においては洗濯をするには、それなりに大量の水が必要になる。それでいて濡れた服を乾かすための天気にも恵まれなければいけない。そんな環境が整った際に始まる一大イベントが洗濯である。

その光景がこれまた楽しそうで。人工物で覆われた河のような場所で、たまたま流れてきた魚を食したりと平和な時間が続く。まぁ、「ヒト以外の生き物なんてもう残ってないと思ってたけど」という不穏なチトの台詞など、不穏な空気は変わらないのだが。

 

「遭遇」「都市」

終末世界でまさかのヒトと遭遇である。名前はカナザワ、地図を作りながら旅をしているそうだ。ちなみにチトとユーリには特に目的はないように見受けられる。漠然と上へと向かっているようだが、その理由は定かではない。

ちなみに、この世界は古代のヒトが作り上げた階層構造の都市となっており、今となってはいない人類はそのインフラに住み着いていたようだ。カナザワは今いる階層については、全て地図にしてしまったらしく、次は上の階層の地図を作るつもりのようだ。

上の階層……「洗濯」では上の階層から魚が流れてきたというような考察を、チトはしている。もしかしたら今いる階層にはないような食料などあるかもしれない。そんな期待を胸に抱きつつ、カナザワの地図を頼りに上の階層へ向かうための昇降機のある塔へと向かった。

カナザワは地図が命のように大切なものだと語った。これが無くなったら死ぬとまで言い切っている。それに対して、燃やしたら本当に死ぬのか試そうとするユーリは割と畜生だ。だがそれが良い。

 

「街灯」

このブログではネタバレをしないように書くようにしている。だが、ユーリのこの台詞だけは書かせて欲しい。

「意味なんかなくてもさ」

「たまにはいいこともあるよ」

「だってこんなに景色もきれいだし」

この作品は印象に残るシーンが多かった。ラスト、上の階層に来て広がっていた景色も言わずもがな。爆笑するようなこともなければ、興奮するようなバトルもないが、それでも心に残る漫画であった。

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【漫画】嘘喰い8 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

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作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 8

ざっくりあらすじ

アイデアルと賭郎との戦いが本格化し始め、カラカルが屋形越えを考えている中、金を荒稼ぎしていた貘たち一行は元金0円でできて、勝てば数億稼ぐこともできるにも関わらず、負けても何も奪われないというギャンブルの話を聞き、梶は乗り込んで調査することに。

感想などなど

黒い耳からカラカルと呼称されたアイデアル所属の殺しから何まで請け負う最強の男。外務卿・泉江夕湖の戦闘力もかなり高いことは言うまでもないが、カラカルには他二人の攻撃をいなしつつ叩けるような余裕があり、どうにもその力量には差があるように思われた。

このままでは賭郎の示す暴力が、アイデアルには通用しないという実質的な負けになりかねない。そんな状況でやって来たのが、夜行丈一というお屋形様のお付きをしていた人物である。

「俺が掃除するのはこのゴミか?」

とカラカルを挑発する強気の姿勢に恥じぬ、カラカルと夜行丈一の拮抗した戦いを見せつけてくれる。決着は警察組織の介入――まぁ、アイデアル達が仕組んだことのようだが――という形ではあったが、今後のカラカルと夜行丈一の戦いが楽しみだったりする。

とにもかくにも。ここでの戦いは今後のアイデアルと賭郎の行動方針を決める上で重要なものだったに違いない。互いに単純な暴力でねじ伏せることはできない……ならば。

賭郎を乗っ取るならば、わざわざそのための方法を作ってくれているではないか。

屋形越えという手段を。

 

さて、そんな戦いが起きていることは知ってか知らずか、斑目貘一行は新たなギャンブルの匂いを嗅ぎつけた。それは元金もなく、勝てば数億、負けても何も奪われないという0円ギャンブルだった。

ギャンブルというのは勝てば大儲け、負ければ大損というゲームだ。そうでなくては、カジノ経営者などは続けることができなくなってしまうし、そのギリギリさが人を狂わせている。

だがこの0円ギャンブルはどうだ。挑戦者側は勝てば得をし、負けても何も失わない。これはギャンブルと呼べるのだろうか?

その話を聞いた梶達はその話に乗っかって、ギャンブルに挑戦してみることとなった。どうにもその話が信用できない梶は、自分が乗り込んで話の真意を暴いてやろうと乗り気だ。

だが話はそんな予想を裏切る形で展開していく。

ギャンブル相手との待ち合わせ場所にやって来たのは高級リムジン。車の中で一円も持っていないことを話すも、それでも何も問題なく賭けができるとして話は進んでいく。その車が向かった先はどこか分からぬ地下駐車場、その奥にある一室に男はいた。

その男の名は雪井出薫。このギャンブルを取り仕切っている、いわば対戦相手だ。

さて、0円ギャンブルとは言ったが、何も賭けないという意味ではない。どうやら今回のゲームでは「ある日の体験や思い出」を賭けるようだ。意味が分からないかもしれない。

通された部屋の壁には、日付が列挙されており、その中から思い出がある・記憶に残っている日というものを選んで貰う。その上でとあるゲームを行い、雪井出が勝った場合はその日の体験を回収される。逆に雪井出が負ければ、その日に設定された賭け金が支払われる……そういう仕組みだ。

そこで行われるゲームは『ラビリンス』。

6×6増すの表に入口と出口を配置し、20枚の壁を使って迷路を作る。相手に自分が作った迷路の入口と出口の場所を教えゲーム開始。先行から入口から進んでいく方向を1マスずつ移動し、壁にぶつかるまで続ける。これを交互に続けて出口に最初に着いた方が勝ちというシンプルな勝負だ。

分かりやすい。こういうゲームは読者としては有り難い。

だが、このゲームの裏にあるからくりはそう単純ではない。果たして梶はこの賭場から生きて帰れるのだろうか。梶の一世一代を賭けた勝負が始まった。

……と期待させるようで煽りを入れて申し訳ないが、彼は超あっさり負ける。ある意味期待通りだが。それでも彼の戦いはこの負けてからが本番だと言っても過言ではない。無料ほど恐いものはない。

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【漫画】ジャンケットバンク 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

鏡に答えはない

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作者:田中一行

試し読み:ジャンケットバンク 1

ざっくりあらすじ

普通の銀行に勤める普通の新人行員・御手洗暉は、ある日特別業務部審査課という聞き覚えのない部署の上司・宇佐美銭丸に連れられ、銀行の地下にある賭場へと連れてこられた。そこでは大金の揺れ動く非合法ギャンブルが行われていた。

感想などなど

物々交換で生活できた社会はとうの昔に終わりを告げて、貨幣社会となってしまった日本で生まれ育って来ました。紙幣は所詮紙ですが、その紙に価値が生み出されているということを真摯に受け止め、日常生活を送るのに必要な金を稼ぐ日々を過ごしております。

そんな貧乏人の自分にとって、数千万から億という桁の金はお目にかかったことがありません。世界には一時間で数億稼ぐ人間がいるという事実は、どこか遠い世界の夢のようにしか感じられないのです。

それは銀行員・御手洗暉も一緒でした。銀行という大金が動く環境で働いていながら、それは手元を離れた客の金。金はデータ上で揺れ動く数字の値に過ぎないという冷めた感覚をした彼にとって、銀行での仕事はやりがいのない退屈な仕事となりつつあるのでした。

そんな彼に舞い込んだ異動の知らせ。「何かやらかしただろうか?」という心配をする彼を出迎えたのは、額を血で汚した特別業務部審査課という聞き覚えのない部署の上司・宇佐美銭丸であった。

そして連れて行かれる地下の賭場。『特別業務部審査課』というのは、この地下の賭場を管理し審査する業務を請け負う文字通り特別な課だった。この漫画はそんな銀行の地下にある賭場で出会った ”何よりも楽しい勝負を優先する” ギャンブラー真経津晨と、彼がギャンブル勝負の果てでどんな最期を迎えるのか見たい銀行員・御手洗暉によるギャンブル漫画である。

 

本漫画における第一ゲームは『ウラギリスズメ』。

ゲーム内容は至極シンプルで、片方のプレイヤーが二つある箱の片方に「宝石」を隠し、もう片方のプレイヤーが「宝石」が入っている箱を当てる。宝石を隠す「ハイド」側プレイヤーが賭け金を設定し、箱を当てる「チェック」側プレイヤーは、「宝石」を見つけられれば金を得ることができて、外せば失う。「ハイド」と「チェック」は一ラウンドごとに交代し、どちらかの資金が尽きるか、六ラウンド終了まで続いていく。

ただの運ゲーのように思われるが、それを心理戦に昇華させるために、二つの箱はそれぞれ ”堅実のつづら” と ”強欲のつづら” と役割が与えられている。

”堅実のつづら” を「チェック」側が選択した場合は賭け金の半額が加減される。つまり賭け金が百万円だった場合、この ”堅実のつづら” を選択して「宝石」を当てても五十万円しか得られない。逆に外した場合も五十万円しか失わない。

逆に ”強欲のつづら” を「チェック」側が選択した場合は賭け金の全額が加減される。つまり賭け金が百万円だった場合、この ”堅実のつづら” を選択して「宝石」を当てても百万円も得られない。逆に外した場合も百万円も得ることができる。

このゲームで三十九連勝をあげている男・関谷仁に、真経津晨という男が挑んでいく。

強欲のつづらと堅実のつづらという要素により心理戦があるとされてはいるが、結局のところ運の要素が強いのではという気がするブログ主は、ド三流のギャンブラーだった。このゲームにおいて重要なのは、相手に ”強欲のつづら” をここぞという時に選択させること。

三十九連勝もしていながら、そのことが分かっていなかった関谷仁。だから貴様は負けたのだ。

 

まぁ、雑魚戦は置いておこう。

次のゲームは『気分屋ルーシー』

各プレイヤーには五つの面に五つの鍵穴が付いた金庫が配布され、その中にはそれぞれの本人の名前が入った「ハート」が入っている。ゲーム開始前にその金庫を交換し、相手の金庫の各面に最低一箇所の「当たり鍵穴」を設定して返却する。受け取った金庫の当たりを一面ずつ交互に探していく。『相手より先に自分の名前入りハートを金庫の外に出すこと』が勝利条件となっている。

さて、このゲームの面白いポイントは「当たり」を間違えた場合だ。

その場合、金庫を開けるために必要な鍵をルーシーに返して貰う必要がある。その際、ルーシーは少々乱暴に鍵を返却してくることで、手の平に一つ穴が空くこととなるのだ。

……大金を得るためには、それくらいの傷は覚悟してきている変態ばかりの賭場である。そんな説明を受けてもなお、笑顔で振る舞う余裕のある面々ばかりだ。みな狂ってる。先ほどの雑魚とは比べものにならない。

第一巻はそんなゲームの途中――といってもかなり終盤――で終わることになるが、何を考えているか分からない真経津晨に相手取って、振り回されながらも奮闘する獅子神敬一の視点で描かれていく。

相手の性格を利用して、真経津晨に自分の心理を重ね合わさせることで相手の心を打ち砕いていく勝ち確定シーンは快感が大きい。ゲームのテンポもよく、一対一ということもあってか、まだまだ始まったばかりということもあってか、かなりシンプルな内容が多い。これから先の戦いに期待が高まるばかりだ。

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【漫画】ジョジョリオン17 感想

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「呪い」を解く物語

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作者:荒木飛呂彦

出版:集英社

試し読み:ジョジョの奇妙な冒険 第8部 モノクロ版 17

ざっくりあらすじ

ドミロテの猛攻をかいくぐり、植物鑑定人・豆銑礼と落ち合うことができた……が、既に彼は岩人間からの襲撃を受けていた。

感想などなど

木々の写真をチラリと見せただけで、ロカカカの枝の場所を特定してしまう豆銑礼。さすがは憲助さんが頼るだけのことはある『植物鑑定人』だ。そして、自分を守ることを最優先しろという彼の言葉も、自分が助かりたいということだけでなく、状況を打破するだけの能力が自分にあるということを理解した上での発言だと分かる。

そのことを理解しているのは岩人間も同様で、全力で彼を狙ってくる。

今、定助達を襲撃してきた岩人間は二人。

一人目の名はアーバン・ゲリラ。スタンド名は『ブレイン・ストーム』。接触した生物の細胞を破壊していく細菌のような能力を持っている。これが尋常じゃ無いくらい強い。なにせそのスタンドは細菌のように空中を漂い、それに触れてしまえば身体が徐々に腐っていくかのように穴だらけになって壊れていく。騒ぎを聞きつけてやって来ていた警官が、そのスタンドにより服だけになってしまった光景は記憶に新しい。殴る・蹴るというような暴力ではないだけに防ぎ方も分からないのが厄介なところだ。

二人目……正確には一匹というべきだろうか。名前はドレミファソラティ・ド。スタンドは持ち合わせていないようだが、キャタピラのような脚や堅強な身体に、人一人を収納できるような構造をしており、アーバンを身体に格納しつつ地中を移動して定助達を追って山に来たらしい。

姿を追うことができない地下から、細菌のような避けられないスタンド攻撃というダブルパンチ。定助達は確実に追い詰められていく。

 

この第十七巻を通して描かれるのは、三人と岩人間の戦闘である。だがそれと同時に、豆銑との信頼できる関係性が紡がれていく過程も注目すべき点だと個人的には思う。康穂を囮として突き落とした豆銑の行動、それに対して憤りを隠せないが、彼がいなければホリーさんを助けられる新ロカカカの実の居場所も分からないという事実と天秤にかける。

その結果の定助の行動は、康穂のいる場所に飛び降りるというものだった。敵のスタンドは触れられたら細胞が壊れていくという超強力な能力であり、地面という攻撃の届かない場所からいきなり現れてくるという厄介な機動性も兼ね備えている。ドレミフファソラティ・ドに守られているため、表に出てきたとしても生半可な攻撃は通らない。

豆銑のとっさのナイフ攻撃により、少しずつダメージを与えることはできているが、岩人間を殺すには至らない。この戦いにおいて攻撃できるチャンスは絶対に逃してはいけない。だが、能力を受けないようにするという慎重さも必要だ。

それでも敵の攻撃が上手だったと言わざるを得ない。

豆銑も定助も能力により顔の肌が少しずつ崩れていく……それでも目の力が強いまま、岩人間を睨み着けているのは何故なのだろう。そういえばこの漫画はジョジョだった。これまでの主人公達も、敵の攻撃で追い詰められても逃げようとはしなかった。目を逸らそうとしなかった。

そんなことを思い出させてくれる戦いだったと思う。個人的なジョジョリオンのベストバトル第二位である(ちなみに第一位は九巻のクワガタバトル)。

康穂の過去も少しずつ明かされ、彼女にもまたホリーさんにお世話になったことがあったり、岩人間との遠からずの因縁があることまで明かされ、彼女にも戦う意味ができたのは大きな進展だと思う。

これから先の戦いはもっと苛烈になると思われる。それでも目を背けずに戦い続けて欲しいものだ。

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【漫画】鬼滅の刃7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻
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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

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作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 7

劇場版:鬼滅の刃 無限列車編 感想

ざっくりあらすじ

傷も癒え、修行も一段落した炭治郎一行は、炎柱・煉獄杏寿郎に聞きたいことがあるということで彼のいる無限列車へと向かった。

感想などなど

胡蝶しのぶの下で栗花落カナヲらと共に修行に励んだ炭治郎達。女性に触れられるからとか、不埒な感情も一瞬交じった修行だったような気もしたが、結果良ければ全て良し。全集中の呼吸を習得できたし、何も問題ない。

第七巻は傷も癒えて、お世話になった屋敷を出ていくシーンから始まっていく。鬼を狩りに行くということは、これからもう会えなくなるという可能性だってある。お世話になった人達全員に声をかけて回る炭治郎の律儀さと、天然人タラシに落とされる者達を出しながら、次へと進んでいく。

その中で一つ重要な情報が提示された。

那田蜘蛛山での累の首を切り落とした(正確には違うが)ヒノカミ神楽の呼吸を用いた一撃。父は何かしらの呼吸の使い手だったのではないか? 例えば ”火” の呼吸みたいな感じの奴。

そこでしのぶにヒノカミ神楽のこと、火の呼吸のようなものがあるかを訊ねた。しかし、彼女は何も知らないのだという。だが、とっかりとなるようなヒントを教えてくれた。

「火の呼吸はありませんが炎の呼吸はあります」

「炎の呼吸は火の呼吸と呼んではならない」

火と炎の間にそれほど違いはないように思う。それを「呼んではならない」とわざわざ厳しく禁じられていることには、何か深い理由があるのではないか。その仔細を訊ねるためにも炎柱・煉獄杏寿郎に会いたい。

そこで彼のいるという無限列車へと向かう一行。つまりは別に任務がある訳ではない。「もう少しゆっくりしていても良かったのでは?」と思わなくもないが結果としてこの選択は正しかったことが分かる。

 

炎柱・煉獄杏寿郎。炎の呼吸の使い手である。

第六巻の柱会議では、迷わず炭治郎の処刑を言い放った男である。彼に対して良い印象を抱いている者は、この時点でほぼいないのではないだろうか。彼との無限列車でのファーストコンタクトも、お世辞にも良いものとは思えない。

多くの人が乗っている列車の中で、「うまいっ!」「うまい!」と大声で何度も言いながら弁当を食べる姿。炭治郎がわざわざ来た理由として、ヒノカミ神楽や火の呼吸についての情報を求めても、知らないと迷う素振りなく言い切る。まぁ、知らないものは知らないのだから仕方ないが。

その後も炭治郎の言葉をあまり聞かない会話が続いていく。

しかし。そんな彼の印象は鬼との戦闘が始まると吹っ飛んでいく。柱になっているだけのことはあり、その技は極まっている。雑魚鬼など敵ではない。狭い列車内という環境で、乗客を傷つけずに鬼を切る技は必見であろう。

だが、鬼も馬鹿ではない。全力で殺しに来ている。

ちなみに無限列車で人を襲っていた鬼は、前巻のラストで唯一生き残ることができて、無惨から大量の血を与えられた魘夢である。無惨に「人の不幸や苦しみを見るのが大好き」と語って気に入られた変態というだけあって、その戦い方は人を苦しめること、絶望にたたき落とすことに特化している。

彼の扱う血鬼術は、人を眠らせて好きな夢を見せるという術である。

それにより眠らされてしまった炭治郎一行。彼らは自分達が望んでいる目覚めたくないと思ってしまうような夢の世界に閉じ込められてしまう。例えば、炭治郎は無惨に殺されてしまった家族と共に生活する世界というように。

そんな彼らにトドメを刺すのは、魘夢に好きな夢を見せて欲しいと願う少年少女。鬼殺隊が見ている夢の世界に入り込み、精神の核というものを壊して二度と戦えないようにしてしまおうというのだ。

夢から覚めようにも、まず夢であるということに気付くことが困難な状況をどのように打開するか。そのためには尋常ならざる精神力が必要だった。これはきっと炭治郎にしかできない戦いだったと思う。

何かを成し遂げる者は、これくらいの芸当はできるのかもしれない。良い戦いであった。

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻
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【漫画】嘘喰い7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻
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※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

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作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 7

ざっくりあらすじ

ミサイルが発射された……かと思われたが実際に飛んでいたのはロケット弾であった。お屋形様との賭けに勝った貘は、佐田国との勝負での報酬だけでなく、さらなる要求を突きつける。

感想などなど

ミサイルが発射されて終わった第六巻。しかし、それはまさかのロケット弾だった。それでも兵器であることには変わりないしテロなのだろうが、「ミサイルが発射されかどうか」という賭け内容だったために、この勝負は貘の勝ちと相成った。

ちなみにロケット砲が発射されたのは、武器商人カールが「もうミサイル発射ボタンは押しちゃったから、これからいう指示通りに操作してミサイル発射を止めてね」というバレバレの嘘に騙されたマルコが、その指示通りに従って操作しようとして間違ってロケット砲を発射してしまったというオチである。何というか、身体能力は化物かもしれないけれど、頭脳に関してはアレだったマルコである。他人を疑うということを知らなすぎる。

そして、佐田国のハングマンにより首吊りも執行されることとなる。死ぬことに対して恐怖心を抱かない狂人は、その首に縄をかけられてもなお余裕な表情を浮かべ続けた。しかし、そのまま狂った状態で死ぬことを許さない男がいた。

斑目貘である。彼ははっきりと言い放つ。

「アンタが死ぬのは……報いだ」

「下らん人殺し 下らん革命のね」

「死んだ事も無いのに死ぬのが恐くないって分かるの?」

そんな貘の言葉を聞き、克服していたはずの死への恐怖の感情が蘇ったのだろう。最期は惨めな醜態をさらし、死にたくないと喚きながら死んでいった。貘は彼を化物としてではなく、人として死なせていったのだ。

……とここまでが第七巻の冒頭の展開である。ハングマンの勝負はこれで一件落着と言って良いだろう。

だが問題は二つ。

一つ目、賭けに勝った貘はお屋形様に何を望むか?

一応、金ということで話は進んでいた。だが、貘はその話を遮り、別のものを望んだ。それは自分を「賭郎」の会員にすること。前回、廃ビルでの勝負では梶を「賭郎」の会員にした。その時ではなく、”今” 彼は「賭郎」になることを誓った。お屋形様を煽っているかのような印象を受けたのは、自分だけだろうか?

二つ目、お屋形様の一連の行動の目的である。

貘は佐国田を利用して、株の大暴落を引き起こして儲けようとしている者がいて、それがお屋形様ではないかと話をしている。それは真実なのだろうか。また、目蒲が佐国田のイカサマに加担していることを確認しに来たと、お屋形様自身が語っている。それは嘘ではないだろうが、お屋形様自身が来るという意味が分からない。

どこからどこまでが真実で、これから先どうなっていくのか?

視点は貘達だけでなく、賭郎側も入り乱れながら展開していく。

 

賭郎は強大な暴力を持ち合わせている。その力は敵を作りやすい。

今回は「ミサイルでの株大暴落作戦の失敗によって生じた損益を補填しろ」とアイデアルという組織が話を持ち込んできた。アイデアルというのは、世界中の反政府組織やゲリラの資金運用を生業とし、近頃は犯罪組織の乗っ取りも仕事の一つとしている闇組織である。

そんなアイデアルと賭郎の戦争が幕開けとなった。

あっさりと死んでいく下っ端の賭郎職員、立会人と殺し屋の戦いも始まり、人が平気で殺し殺されていく。その状況を知っているはずの警察内部では、アイデアルと賭郎それぞれの息がかかっており、全くもって油断できない。

表立たない裏社会の戦争。梶と貘もそれに巻き込まれ……いや、貘の場合は自ら突っ込んでいくこととなる。暴力が大きな者が勝つ単純な世界。梶は生き残れるのだろうか。

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【漫画】ゆるキャン△(11) 感想

【前:第十巻】【第一巻】【次:第十二巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

キャンプに行こう

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作者:あfろ

試し読み:ゆるキャン△ 11巻

ざっくりあらすじ

バイクで吊り橋を回りながら大井川キャンプへと向かうリン・綾乃ペアと、一人電車で目につく食べ物を買い食いして回るなでしこ。それぞれの旅の終着点であるキャンプ場での夜は、なでしこが料理を振る舞って……

感想などなど

なでしこが一人旅の楽しさを知り始めた今日この頃、リンは友達と一緒に旅に出ることの楽しさに嵌まりつつあった。そんなそれぞれ二人の視点を交互に描くことで、キャンプの楽しさと旅の楽しさの二つを描いている贅沢な第十一巻。

最近はキャンプ要素よりもそれぞれの地域を旅する要素が強くなってきているのは、人によってはマイナスポイントかもしれない。が、自分的には行ったことがない場所の風景やイベントが描かれているだけでも楽しいので良し。

例えば。

なでしこは目的地である大井川キャンプ場へ向かうためにアブト式列車に乗り込んだ。

アブト式列車とは、急勾配を安定して登っていくために作られた列車であるらしい。急な坂を登るために、普通の列車と合体して後ろから押していくようだ。そんな合体の光景が見れるのは日本だけということで、鉄道ファンにはたまらないとか。

リンと彩乃の二人は、バイクで険しい道を進みつつの吊り橋巡りを第十巻から継続。季節はまだ寒さがあり、バイクに乗っていることで奪われていく体温と相まって、食べるおでんがこれまた美味しそうなのだ。

バイクで寒い思いをしつつ、揺れて恐い吊り橋を渡る。自ら苦労を買って出て、その後に感じる疲労感や食事を楽しむ。これぞ旅の醍醐味にしてマッチポンプなのではないだろうか。

他にも。

ダムで食べるダムカレー。お茶の苦みと風味が美味しい川根茶ソフト。カフェでいただくジェラートやケーキといったスイーツ。渓流そば。100%ビーフのハンバーグ。などなど。

どれも旨そうなんだよなぁ……。

なんだろう、旅に行きたくなってきた。

 

そんな旅は第十巻から継続して描かれてきた。楽しい時間も終わってしまう。なでしこにとっては久し振りとなる彩乃と過ごす時間。住んでいる地方が違うため、これから先も頻繁に会うということはできないだろう。

それでもまたいつか旅に一緒に行こう、という約束を交わし、それぞれが帰路につく。

「このキャンプももう終わっちゃうけど 思い出は残るよね」

というなでしこの独白が好きだ。終わって寂しい。でもその寂しいが楽しい。

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※ネタバレをしないように書いています。

「呪い」を解く物語

情報

作者:荒木飛呂彦

出版:集英社

試し読み:ジョジョの奇妙な冒険 第8部 モノクロ版 16

ざっくりあらすじ

無関係な人々を巻き込んで攻撃をしかけてきた岩人間ドミロテ。敵の居場所を特定するために定助は康穂に助けを求めたが、常敏に阻止されてしまう。果たして「植物鑑定人」に会うことはできるのか?

感想などなど

ドミロテのスタンド「ブルーハワイ」により、杜王町には尋常ならざる被害が出た。子供が轢かれて、婦人が身体中がぐちゃぐちゃになりつつ、金網に突っ込んでサイコロステーキみたいになってしまった人もいる。一番最初の少年を見る限り、一度ゾンビのようになってしまっても能力が解除されれば元に戻るようだが、決して無事ではいられないだろう。

しかも、このゾンビによる攻撃の射程距離は少なくとも街の全域に及ぶ。街の外に出たとしても逃げ切れるかどうか。

しかも。

この攻撃によりゾンビ化するのは人だけではないらしい。タクシーに乗り込んで走り去る定助の頭上に、鳥が激突してきたのだ。そこから命からがら逃げ延びたかと思えば、次にゾンビと化したのはハエである。

頼みの綱である康穂が常敏に攻撃された第十五巻のラスト、敵の居場所を特定するための手がかりは奪われてしまった。

もう勝てない……敵が厄介すぎた。

とはいっても、こちらの仲間もチート級の能力だったんだよなぁ……と思わされる幕引きだった。そのチート仲間というのは康穂のことなのだが、彼女が颯爽と現れて「地図を調べるのが一番好き」とか言いながらドミロテを追い詰めていくシーンは痺れるものがあった。

ジョジョシリーズの女性陣は強者ばかりだが、その中でも彼女はかなり上位に来る気がする。

 

そんな戦いを経て、語られるは常敏の過去。彼はロカカカの実の密輸や、岩人間達の資金洗浄などに加担し、東方家を裏切る悪い人のように描かれている(実際そうなのだが)。

しかし、彼には自身の息子・つるぎの病を治したいという目的があり、東方ふるうつ屋をより繁盛させて大きくしたいという思いもあった。それらは決して東方家を裏切ろうとかそういった意思はない。全ては東方家の未来のためだと信じて疑わない。

さて、そんな彼の過去はなかなかに壮絶だった。

東方花都という憲助の元妻にして常敏の母親は、殺人罪で十五年の刑で服役していた。

東方家の長男は代々、病で十五才以上生きることができないとされてきた。しかし、常敏は生きている。

この上記二つの事実を繋げて、想像して欲しい。呪いのような病に罹っても生きていくために、代々の東方家はどんな手段を取ってきたのだろう。東方憲助も代々の方法と同じ策をとるつもりだと語った。その策とは一体なにか。

常敏の過去が暴かれると同時に、この家の秘密もつまびらかにされていく。ジョジョリオンは謎多いシリーズであるが、こうして謎が確実に解き明かされていくと楽しくなってくる。

とても重要な情報が多い話であった。

 

さて、時間は今に戻ってくる。もともと「植物鑑定人」に会うために、憲助さんに教えて貰った場所へと向かっていた定助は、その道中でまさかの人物に遭遇する。

何を隠そう、その会いたかった植物鑑定人・豆鉄礼が走っているバスに乗り込んできたのだ。

「君はわたしのことを敵にしゃべってしまったようだが……すでにあいつらがオレの所に来た」

……おそらく岩人間でスタンド能力者だろうが、そいつらから逃げ出したということは、彼もまたスタンド能力者であった。

スタンドは「ドギー・スタイル」。「身体をワイヤー・ロープ状にして伸ばすことができる。伸ばしたら伸ばした分だけ身体が欠けた状態になる」という六部の徐倫と少し似た能力のようだ。

シンプルな能力は強いとされるが、彼もまた例外ではない。その能力の汎用性や便利さはかなりのものだ。シャボン玉を飛ばすってなんやねん、という気持ちになる。それにしても、これまで岩人間を何人も破壊してきた定助に、チートスタンド「ペイズリーパーク」の康穂、汎用性の高い豆鉄礼と役者は揃った。これで岩人間にも勝ったな。

と思ったが甘い。

敵は触れればほぼ勝ちという厄介過ぎる能力の持ち主であった。スタンドは本人の心が反映されるようだが、岩人間達は一体どんな心しとるんだと心配になる。

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